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【セミナーレポート(2015.7.21)】東京オリンピック・パラリンピックの成功のために、私たちができることとは? スポーツボランティアの理想と現実<後編>

2015年10月28日 インタビュー Written by 管理者

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 東京オリンピック・パラリンピック(以下オリパラ)の成功のために、私たちができることの一つに、ボランティアが挙げられる。

 東京オリパラでは約8万人のボランティアが必要だといわれているが、そのマネジメント手法が確立されているとはいえないのが現状だ。どのようにボランティアを運営することが必要なのか? 東京オリパラをきっかけに、スポーツボランティアが定着するためには、何が重要なのだろうか?

 7月21日、NPO法人日本スポーツボランティアネットワーク(以下、JSVN)の事務局である但野秀信氏と、一般社団法人PARACUPの代表理事、森村ゆき氏をゲストに迎えたセミナー、「スポーツボランティアの理想と現実」(主催:株式会社RIGHT STUFF、会場:株式会社フォトクリエイト 3階セミナールーム)の内容を振り返りながら、あらためてボランティアの実情と今後について考察しているこのシリーズ。

 これまで、但野氏と森村氏それぞれの講演をお届けしてきた(但野氏「第1部 スポーツボランティアの実際」、森村氏「第2部 スポーツボランティア運営の実際」)。最終回となる今回は、但野氏と森村氏によるトークセッションをお届けしよう。(前編はこちら⇒)(中編はこちら⇒

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■ボランティアの募集は手段であって目的ではない

――但野さん、日本スポーツボランティアネットワーク(以下、JSVN)が設立された背景を教えていただけます?

但野「笹川スポーツ財団の調査によると、日本のスポーツボランティア団体の数は増えているにもかかわらず、ボランティアに参加する人数は変わっていないことが分かりました。スポーツボランティア団体の課題は、登録をしているボランティアに活動の機会を提供できていないということでした。しかし実際には、各スポーツ団体やイベント主催者はボランティアを必要としています。つまり、マッチングができていないということです。ボランティアに関する情報が共有されていない背景があり、スポーツボランティア団体のネットワーク化を目的とするJSVNを2012年に設立しました」

――この活動を通して、ここ数年で感じている変化はありますか?

但野「加盟している団体からは、それぞれのボランティア運営の特徴や方法が分かったという報告があります。例えば、イベント会場のボランティア運営は、屋内と屋外で異なります。主催団体が民間なのか、それとも行政なのか。そうした事例に合わせたノウハウが集まり、加盟団体で共有し、輪が広がってきています。

 また、2020年東京オリンピック・パラリンピック(以下オリパラ)の開催決定をきっかけに、多くの団体がボランティアについて考え始めています。都道府県、市区町村、各競技団体、総合型地域スポーツクラブ、企業での社会貢献活動などから問い合わせを受けています。取材やインタビューなども増えています」

――登録されている団体数はどれくらいあるのでしょうか?

但野「団体数は15です。講習会の受講者数は総勢1800名程度です。JSVNでは年間約40件の講習会等を開催しています」

――ボランティアリーダーの役割について教えてもらえますか?

但野「ボランティアリーダーとボランティアの違いは、JSVNではライセンスを持っているかどうかです。ボランティアリーダーの役割は、ボランティアの皆さんが気持ち良く活動できる環境を整えることです。

 また、JSVNの研修会ではフォロワーシップについても伝えています。リーダーをどう支えていけばいいのかを学びます」

森村「識別という意味で言いますと、当日リーダーと分かるように腕章を付けたり帽子の色を変えたりはしています。役割としてはボランティア参加者の相談役ですので、他のボランティアよりも大会の情報を多く持ってもらうようにします。あとはボランティアをまとめる役割も担っていますし、PARACUPではボランティアにも楽しんでもらいたいと思っていますので、そうした雰囲気を作ってくれるような人にお願いしています。特にライセンスなどはありませんので、やりたいという人がいれば任せています」

――リーダーは事前に決まっているのですか?

森村「事前に決めています。どの拠点のリーダーになってもらうかを事前にお願いし、どういう役割を担ってほしいかマニュアルを作って渡しています」

――ボランティアではなくアルバイトを使うという選択肢もあるかと思います。ボランティアとアルバイトでは、どのように変わってくるでしょうか?

森村「PARACUPでは違いますが、一般的な行政などがやる大会では、コストだけを考えると、ボランティアでもアルバイトでも実はそんなに変わらないと思います。大会主催側でボランティア担当をつけたり、ボランティア用のユニフォームを作ったり、説明会を開催したり、マニュアルを分かりやすく作ったり、大規模な大会でもっと分かりやすくするために映像を作ったりと、ボランティア運営を真剣に始めると、実は多額のコストがかかります。そうしたコストを単純にボランティア参加者の人数で割ると、アルバイトを雇うのとあまり変わらなくなる可能性があります。

 何が変わってくるかというと、クオリティーです。もちろん例えばディズニーランドのように、ホスピタリティーあふれるアルバイトをそろえている場合もありますが、現状のスポーツ団体ではそこまでのホスピタリティーをもったアルバイトを数千人規模で抱えているところはないと思います。そう考えると、主旨に賛同して一緒に支えていこうという人は、アルバイトよりもボランティアの方が多いと感じます。

 ただ、ボランティアがやるべきではない仕事もあると考えています。例えばクレーム処理であったり、ボランティアとして楽しみながらやれる仕事ではないものには、対価としてお金を払って責任をもってできる、アルバイトを雇う必要もあるでしょう。そこは主催者側のスタンスが表れる部分だと思います」

――現状スポーツ団体の多くはあまりお金がありませんので、ボランティアを無償の労働力と捉えている傾向にあるのでしょうか?

森村「そういう団体があることは否定しません。運営予算が少ないからボランティアを使いたいという発想をする団体に対しては、運営資金を増やす努力をしてくださいとハッキリと伝えています。本来、大会を運営するにあたって必要な資金を集めることは、主催者側の仕事です。その努力をしようとせず、安易にボランティアに頼ろうとするのは、怠慢であると考えています。予算が足りないのであれば参加費を上げればいいと思いますし、参加費を上げるためには大会のクオリティーを高める努力が必要です。そのためにボランティアの力が必要だということであれば、そこで初めて大会の趣旨に賛同してくれるボランティアを募るという話になってくるはずです。そうした発想の順序になっていない場合が多いのは確かだと思います」

――ボランティアに参加したいと考えている人は、どういう観点でボランティアの活動場所を選べばよいのでしょうか?

但野「自分でやりたい活動を探して直接問い合わせをしてください。お住まいの近くで、多くのスポーツイベントやスポーツクラブなどが活動しているはずです。その中で、例えば野球やサッカー、あるいは世話好きや子どもと関わりたいなどの、自分が気になるキーワードで探し、直接に連絡を取った時の相手の対応なども含めて、自分がやってみたいと感じる活動を探してみるといいと思います」

■個性や特技、多様性を生かした仕組みづくりが必要になる

――2020年の東京オリパラに向けた話についても聞きたいと思います。8万人が必要だということですが、人数は十分に集まるのではないかと言われています。

但野「ロンドンオリパラで24万人、リオオリパラでも24万が応募しましたが、それをはるかに超えるのではないかと思います。もし100万人がボランティアに応募した場合、90万人以上の人は落選するわけです。ですがその90万人にも、それぞれに個性・特技があるはずです。この方々の自発的な活動をチカラとする仕組みができれば、東京オリパラをもっと市民レベルで盛り上げられるのではないかと思います。

 また東京オリパラをきっかけに、2020年以降にもスポーツボランティアが定着するように今から考えていく必要があるでしょう」

――東京オリパラに向けた、大規模ボランティア運営の課題は何でしょうか?

森村「8万人が集まるかどうかという点に関しては、但野さんも言うように心配ないと考えています。問題は、集めた後です。ボランティアの教育やリーダーの育成に関しては多くの方が非常に関心を寄せています。私は育成という言葉があまり好きではありませんが、どのようなスタンスでボランティアを一致団結させてまとめていくかが非常に重要です。そのために大事なこととして、多様性を認めていくことがあると考えています。経営者、サラリーマン、学生、定年退職している方と、さまざまな人がいて、それぞれに楽しみ方が違います。そういった多様な人たちを、オリパラを支えたいという共通の目標に向けてどのようにまとめていくのかが重要になります。ある一定のルールはつくるものの、その中でどういう人たちにどの程度の裁量を与えていくのか、どのようなプログラムの下で推進していくのかが大事になってくるでしょう。あとは、ロンドンオリパラの事例のように、リーダーシップを持ってボランティアにメッセージを発信し、浸透させていくかも大事になるでしょう」

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本セミナーには非常に多くの参加者が詰めかけ、質疑応答の時間には積極的に質問を投げかけるなど、スポーツボランティアに対する注目の高さをうかがわせた。セミナー終了後の懇親会でも、但野・森村両氏と意見を交わし、参加者同士でも情報交換をする姿が数多く見受けられた。2020年の東京オリパラ、そして2020年以降に向けて、日本におけるスポーツボランティアの重要性はますます高まっていくことだろう。より多くの人々が、スポーツボランティア活動に気軽に参加して、個性や特徴を生かして活躍しながら、楽しんで自分の成長を実感できる。そんな世界がやってくるのも、遠くないのかもしれない。

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<講師プロフィール>
但野秀信(ただの・ひでのぶ)
NPO法人日本スポーツボランティアネットワーク 事務局/笹川スポーツ財団経営企画グループ
http://www.jsvn.or.jp/

2005 年、ホノルルマラソン完走をきっかけに友人たちと立ち上げた『PARACUP~世界の子どもたちに贈るRUN~』は、参加者5000人、ボランティア 650人、共催団体17団体と、日本でも数少ないボランティアで作り上げるチャリティーランニング大会に成長。走ることを楽しく、楽しみながら世界の子ど もたちをサポートする仕組みをつくり、寄付金額は2014年大会までで約7000万にのぼる。第1回~9回目まで東京マラソンのボランティア運営にも携 わった。

森村ゆき(もりむら・ゆき)
一般社団法人PARACUP 代表理事
(http://www.paracup.info/)

2005 年、ホノルルマラソン完走をきっかけに友人たちと立ち上げた『PARACUP~世界の子どもたちに贈るRUN~』は、参加者5000人、ボランティア 650人、共催団体17団体と、日本でも数少ないボランティアで作り上げるチャリティーランニング大会に成長。走ることを楽しく、楽しみながら世界の子ど もたちをサポートする仕組みをつくり、寄付金額は2014年大会までで約7000万にのぼる。第1回~9回目まで東京マラソンのボランティア運営にも携 わった。

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