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スポーツビジネスの最前線を走り続けてきた半田裕氏が語る、華々しい経歴の裏側と業界で生き抜くための5つの要素~後編~

2016年11月07日 インタビュー Written by AZrena

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 SJNでは、知られざるスポーツの裏側の情報を提供している「AZrena(アズリーナ)」のご協力を得て、記事提供を頂いております。

 長きにわたって、国内外のスポーツビジネスの第一線で活躍してきた日本人の一人、半田裕氏のインタビュー記事の後編をお届けします。

前編はこちら⇒https://sjn.link/news/detail/type/report/id/93

 2009年にOffice Strategic Service株式会社を設立し、現在は複数のスポーツ関連企業の事業コンサルティングを行いながら、バンタンスポーツアカデミーにおいて、明日のスポーツ界を担う若者に教鞭(きょうべん)を執っている半田氏は、日本社会人アメリカンフットボール協会の運営の手伝いをしたことをきっかけに、スポーツの仕事に携わることになったといいます。

 その後、IMGで選手のマネジメント業務などに携わり、アディダスジャパンの立ち上げメンバーとして組織を大きくしていきながら、サッカー・ワールドカップ(W杯)を迎えた半田氏の次なる舞台は、あの世界的に有名なスポーツメーカー企業でした。


(出典:AZrena「スポーツビジネスの最前線を走り続けてきた半田裕が語る、華々しい経歴の裏側と業界で生き抜くための5つの要素。」2016年10月31日)

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■ナイキでグローバルな視点でのスポーツマーケティングを

 日韓W杯が終わった後、僕はアディダスで140日休みがたまっていたんですよ(笑)。そんなに休んだら、もはや辞めるのと同じだと思ったので、ベズ社長からは休職でと勧められましたが、いったん辞めさせてもらいました。

 休みに入り、家族と旅行に出掛けたりしている中で、ナイキからのアプローチがあったんです。正直アメリカの会社がフットボールをやりたいなんて…と、どこかでバカにしていました。

 でも最終的にアメリカのナイキ本社に行った時に会ったのはヨーロッパ人が多く、フットボールの話も普通にできるし、IMG時代の知り合いもいたりして、何か相性が良い感じがしたんです。『フットボールで世界No.1になりたい』とはっきり言っていましたし、この人たちとなら面白いことができそうだと思ったので、最後はブランドというわけではなく、この人たちと働きたいという思いが強くなり入ることにしました。アディダスを辞めてから3カ月後のことです。

 ナイキではかなりの日数を海外に行っており、世界中のナイキの同僚と連携しながら物事を動かしていくことと、ナイキが目指す、『よりライフスタイルに近いスポーツの在り方の提供』という点で、学びはたくさんありました。

 ナイキまでの経歴で僕は世界のほとんどの大きなスポーツイベントやそれに携わる選手たちと関わってきました。でもその一方で自分のアイデンティティーはやはり日本にあると思っていました。

 だから、その中でジャック坂崎さんがジャパン・スポーツ・マーケティングを立ち上げ、“日本版IMG”をやろうとしていたことが大変魅力的に感じたのでそちらに移り、さらにはその後のOffice Strategic Service株式会社(OSS)の起業につながってきています。


■スポーツ界で働くために重要な5つの要素

 マーケティングのスキル、ドキュメンテーション、プレゼンテーション、語学、コミュニーケション。この5つは必要でしょう。

 特に即戦力になれる人は先に挙げた5つの項目を備えている傾向にあることが今までの経験で分かりました。それらを持っているなら、あとはネットワークづくりです。それがないと行きたくても入り口がないんですから。

 少なくともこの5つの力があると分かっていれば、例えば僕のネットワークから誰かを紹介することもできるわけです。

 スポーツ業界の入り口としては、分かりやすい商品やサービスを扱っているところがいいと思います。アディダスやナイキというのは物を作って売っているところですが、ジャパン・スポーツ・マーケティングやOSSというのは目に見えないサービスを提供しています。

 今だとマイナースポーツ選手のために…とか、選手のセカンドキャリアについて…とか言う人は結構いて、その志は最高だけど、僕は“お金に換える”という部分がないと結局口だけの話になってしまうので、そちらの方面をやりたい人は経験を積んでからにした方がいいと思いますね。


■セカンドキャリアは選手自身がまず、早いうちから考えるべき

 最近アスリートのセカンドキャリア問題について、話題になりますが、僕は選手が引退した後、行く先は4つしかないと思っています。

 1つ目はメディアで飯を食う。つまり話せる人になるということです。
 2つ目は指導者になる。
 3つ目は事業をする。
 4つ目は普通に就職する。

 若い現役選手に引退後の話をしても誰も聞きません。けがや戦力外などである日突然現実にぶち当たって初めて気付くんです。

 話がうまくなかったらメディアには出られないし、指導者も上がつっかえている。そこで手元に数百万円あれば焼肉屋や居酒屋を開くわけです。なぜなら一番分かりやすい事業だから。

 サラリーマンはよほどの人でなければなれないでしょう。選手としてのプライドを捨てて、頭を下げなければならないのですから。

 だからそうなる前の入団の時から、引退後についての話をする必要があるんです。話せば10人中1、2人くらいは将来について考えますよ。

 将来について考える選手にはオフになったら、適性検査をして、先の4つのどれに向いているかを調べ、おのおのの内容についてイロハを教えておけば、いつ引退してもいいように備えられますよね。別にリーグ全体でやらなくても、クラブ単位でこういった取り組みをして、それをチームの特色にすればいいと思います。

 ナイキ時代、Jリーグのセカンドキャリアのプロジェクトの一環で引退した選手の再雇用依頼が来たこともありました。しかし、人事に確認して用意されたポストは店頭スタッフ。これが現実です。

 ですから僕は、選手には甘くないんです。引退後のことをまともに考えなかった人が、いきなりけがをしてプレーを続けることができなくなったとしても、本人の責任ですから。でも逆に早くに気付いて、考えていた人には手を差し伸べたいです。

 プロ野球やJリーグはもちろんのこと、世界トップレベルのレスリングや水泳、体操、柔道などの選手が引退後のキャリアをしっかり歩めるような道筋を考えていくのは協会であり、リーグであり、チームであると僕は思いますね。

 憧れの選手の姿を追い掛ける子どもたちのことを、親御さんが安心して応援できるようになれば、競技の普及発展にもつながるのですから、セカンドキャリアについてちゃんと考えていくべきなんです。


■日本のスポーツ界は転換期に突入。そこで大切なのは“人”

 2011年にスポーツ基本法が成立し、スポーツ庁はいずれスポーツ省になって文科省から離れ、国におけるスポーツの仕組みは大きく変わると思っています。「スポーツ=体育」ではなくなります。

 それに伴い、ビジネスとしてのスポーツも脚光を浴びることになるでしょう。その中でスポーツ界のいい部分をきちんとまとめ、新しい日本のスポーツ界を創造する人を僕は育てたいんです。

 もう一つはラグビーW杯、東京五輪に向けて、最終的に60社以上の企業がスポーツに投資・支援をすることになります。成功すれば、スポーツに対して投資をしたことが、自社にとってメリットがあると感じてくれる企業が一気に増え、2020年以降もまた何かスポーツでやりたいと思ってもらえるようになります。

 それと同時に企業からのお金を受け、スポーツによる価値提供・交換できる人がスポーツ業界内に増えていかないとビジネス側と対話ができなくなってしまいます。だからそういう人を育てておかないといけないんです。

 ただ、日本国内のマーケットは横ばいか微増でしかありません。世界で物を売って成長したい日本の会社は日本国内ではなく、外国の案件に投資がしたいわけです。そして、今回の五輪でスポーツの価値を感じて、投資をしたいとなれば、スポーツマーケティングの窓口となってくれるようなグローバルな人材が求められることになります。だから語学が必要になるんです。

 東京五輪に向け、日本には世界中から人が来て、歓喜の渦に巻き込まれることは間違いないでしょう。しかし問題はそこから先の話。スポンサーになった企業の中にスポーツの価値について考え、生かすためのスポーツマーケティング部なんかができてもいいと思っています。

 お金とモノをどう科学反応させるのかを考え、最終的に実行するのはやっぱり人です。

 でも、人を呼ぶためにはお金も必要なので、スポーツ界を集金力のある場所にもしないといけません。

 いまだにお金じゃなくて気持ちだと言っている人がいますが、そうではなくて、それなりの金額をもらえるような業界にみんなでしていきましょうよ、という話ですね。

 そのためにはスポーツというところだけではなく、他の分野にも目を向けてほしいです。本業にこだわりすぎるのではなく、どうしたら他の分野を関わらせてお金にしていけるのか、考えてチャレンジしていけるように皆さんにはなってほしいです。

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半田裕(はんだ・ひろし)
Office Strategic Service株式会社 代表取締役社長

1956年1月30日生まれ、大阪府出身。甲南大学法学部卒。大学卒業後、ネスレ日本株式会社に入社。自身は中学生からハンドボール出身だが、社会人アメリカンフットボールチームでプレーし、28歳からは同時に日本社会人アメリカンフットボール協会常任理事を13年間務めた。1997年から2002年サッカー・日韓W杯に向けて設立されたアディダスジャパン株式会社に創設メンバーとして参画し、日本代表との契約などに携わる。日韓W杯後は株式会社ナイキジャパンにて主要競技のスポーツマーケティングの陣頭指揮を執る。2006年からはジャパン・スポーツ・マーケティング株式会社取締役を務めた。2009年にOffice Strategic Service株式会社を設立し、現在は複数のスポーツ関連企業の事業およびマーケティングのコンサルティングを行う傍ら、バンタンスポーツアカデミーにおいて次世代のスポーツビジネスを担う若者に教鞭を執っている。
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半田さんが講師を務める、“スポーツビジネス分野のプロを育成する専門の学校”、バンタンスポーツアカデミーの詳細はこちら▼
http://www.vantan-sports.com/


【了】

森大樹●文 text by Daiki Mori

記事提供:AZrena

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