MARS CAMP創設者・仲島修平氏が語る「社会側とスポーツ側を“翻訳機能”でつなぐ必要性」~前編~
2016年11月03日 インタビュー 育成,教育/スクール産業 Written by サッカーキング
SJNでは、サッカー総合情報サイト「サッカーキング」のご協力を得て、記事提供を頂いております。
今回はその第4弾。株式会社マーススポーツエージェントが2010年秋から始めた、スポーツをビジネスにするためのノウハウが詰まった実践型集中講座「MARS CAMP」の創設者、仲島修平氏のインタビュー記事をお届けします。
(出典:サッカーキング「MARS CAMP創設者・仲島修平氏が語る「社会側とスポーツ側を“翻訳機能”でつなぐ必要性」/前編」2016年10月27日)
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スポーツ業界で働きたい――。
そう思い描く人は少なくない。何となく華やかで、何となく注目を集め、そして憧れの選手に出会えるかもしれないと、学生をはじめ、社会人にも人気の業界であることは間違いないだろう。
ではどうやったら入れるのか? そのヒントや答えを提示するのが、「MARS CAMP」である。現在第12期生までが卒業し、約480人の受講者がスポーツ業界へと足を踏み入れた。
この既存にはない画期的にして、業界が求めていた「スポーツに特化した人材育成」という業態を築き上げた人物こそが、仲島修平氏である。
華やかさや注目、憧れは、あくまでも自己の欲求にすぎない。「自分とスポーツの2者間で満足してしまう人は、業界では活躍できない」と仲島氏は言う。考えるべきは、「自分」と「スポーツ」と、その先にある「社会」とのつながりである。
今回、“MARS CAMPの誕生秘話”を中心に、仲島氏に話を伺った。そこには、スポーツ業界の理想と現在地、そして、スポーツ業界で働くことの真意がある。
スポーツ業界で働くことを目指す人、すでに業界で働く人も必見のインタビューの前編は、仲島氏が事業立ち上げまでに歩んできた道のりをお届けする。
■「練習は嘘をつかない」ことを学んだ高校時代
――仲島さんは現在、株式会社ウィルグループから2008年に立ち上げた株式会社マーススポーツエージェントで、スポーツをビジネスにしたい人に向けた実践型集中講座「MARS CAMP」などの事業を手掛けています。あらためて、会社の事業について教えてください。
「仕事のパートナーは、アスリートやスポーツ団体、各種スポーツ協会、リーグ、チーム、業界不問のスポーツ関連企業、一般企業の人事部・広告宣伝部、そしてスポーツを仕事にしたいという個人の方になります。
アスリートに対しては、マネジメントやセカンドキャリアのサポートを行っています。スポーツ団体は、収益を高めていくための事業サイドのサポートなど、野球やサッカー、バスケットボールといったプロスポーツ団体との取り組みを中心に、幅広く展開しています。一般企業の場合は、スポーツに特化した広告代理店というようなイメージです。関連企業と個人には、スポーツをビジネスとして盛り上げていくために、スポーツ業界の外部人事として、最初は中途採用のサポートから始めました。
今のスポーツ業界は、なかなか優秀な人材が入っていく仕組みをつくれていないので、業界内の皆さんと一緒に人材を育成していこうということで、2010年の秋に『MARS CAMP』をスタートしました」
――では、仲島さんご自身について伺いたいのですが、小学生時代に野球をされ、中学、高校時代はサッカー、大学はフットサルをされていたそうですね。最も思い入れのある競技はサッカーですか?
「そこは結構フラットなんです。両親が陸上選手だったので、実はサッカー観戦よりも先に『TOTOスーパー陸上』とかを観に行っているんです(笑)。他にも、オリンピックなどは父親と寝ないで全種目を見ていたくらい、スポーツは全般的に好きです。
野球は、チームが強くなかったのでやめてしまいました。打席があまり回ってこないですし、守る時間ばかりが長くなってしまい…。そんな時にアトランタ五輪を見て、サッカーは出番が多くて、ずっと試合に関与できるなと感じて始めました」
――どんなところが楽しかったですか?
「やればやるだけ伸びていることを実感できたんです。何もない状態からサッカーを始めて、練習をすればうまくなる、『練習は嘘をつかない』ということが分かったところですね」
――大学ではフットサルを始めたそうですが、きっかけは何ですか?
「実は、(北原)亘くん(元名古屋オーシャンズ/元フットサル日本代表)と、(星)翔太(バルドラール浦安/フットサル日本代表)が、民間のスポーツ大会の代表チームにいて、僕たちはバックラインが一緒で、韓国遠征に行ったんです。それが2004年で、『フットサルは面白いからやりなよ』ってことで始めました。
僕は膝を壊してサッカーをやめているので、遊びでやれたらいいなという感覚だったのですが、いざやってみたら、ガチンコとエンジョイの垣根がないんですよ。あれ、膝がかなり痛いぞ、と。ですから、あまりできませんでした」
■やるべきは、スポーツに特化した人事、人材育成
――大学時代は、スポーツショップの店員として仕事に打ち込んでいたんですね。
「フットサルショップの立ち上げにアルバイトとして携わりました。その時に僕はシューズを担当し、フットサルシューズのショップ別注デザインなどもやっていました。お客さんから多くのフィードバックを受けるので、そうした改善点をメーカー側に伝えて、シューズが改良されていく過程を見てきました」
――アルバイトですが、かなり深くまで関わっていたんですね。
「メーカーの展示会にも連れて行ってもらいましたね。本当に良い経験をさせてもらったと思います。例えば、メーカーの方は月曜日にお店に来るので、メーカーで働きたいのであれば、小売店で働くとすごくいいんです。そこで話ができますし、もはや面接がいらなくなるので、メーカー側から逆にお声掛けいただけたりもするんです」
――仲島さん自身もメーカーへの就職を考えていたんですか?
「大学3年の時に、自分は何がしたいのかをあらためて考え始め、メーカーではないなと思いました。メーカーさんの形にする技術の高さを感じていた一方で、そういう既存の強みを持つ産業に行くよりも、まだ業界でできていない業態でインパクトのあることをする方が、自分の存在意義があるのではないかなと思いました」
――そこでアスリートのセカンドキャリア支援に行き着いたのですね。
「そうなんです。社会側の言語を操って、スポーツを扱える人になりたいと思いました。でもそういうことをしている会社はなかったですし、もっと立ち戻ると、雇い主側の気持ちを知ることが必要になるんです。ですから、世の中の雇い主側である人事部のことを理解して、そこからスポーツに対して理解のある人に、自分がなろうということで、ウィルグループを志望しました。
僕はこの会社の事業領域の中に、スポーツをつくりたいと思い、スポーツ事業がない会社を選んだんです。人事の気持ちをできる限り早く学び、成長できる土壌があり、かつ、その先に自分の思いを形にできるプラットフォームがあるということが魅力でした」
――スポーツに特化した人事、人材育成こそがやりたいことだったんですね。
「それが世の中になかったので、絶対にやりたいと思っていました。ケガをしてサッカーをやめてから、離れようとも思いましたが、自分はサッカーをしてきましたし、できることはあまりないと気が付いたんです。
自分はケガでプレーをできなくなりましたが、ケガをしていなくてうまかったら絶対にプロになりたかった。でも一方で、あきらめずにやっていた人がプロになってやっていても、その人たちが将来的に恵まれないという社会的な矛盾を感じていたんです。続ければ続けるほど、うまくなればなるほど現役生活は長くなり、社会に戻ってこられなくなるという負のスパイラルが回っていて、それは社会がつくっているものだと。
アスリート自身は、自分が好きでやっていたことだからと言いますが、うまい人、頑張ってきた人が、生涯で損をする状態は良くないと思っていたので、社会側とスポーツ側をきちんと“翻訳機能”でつないであげることの必要性を感じました」
■「やりたい」、「すべき」、「できる」がそろって事業発足
――では、スポーツに特化した人材育成を見据えてウィルグループに入社して、どのようなことを積み上げてきたのでしょうか?
「仕事のパートナーは、基本的には企業の人事部の方々です。最初は、うちのサービスを使いたいという企業への新規営業から始めました。その後は、従業員が50名から1000名くらいまでの中小企業を数多く担当しました。企業の採用戦略全般のプロデュースや、良い人材を育成するための仕組みの組成など、年間で200社くらいですね」
――そもそも人事とは何をするところなのでしょうか?
「企業の経営資源は、ヒト、モノ、カネ、情報といわれていますが、このうちの『ヒト』のサポート全般を指します。採用、定着、活躍が、人事がすべき大前提の仕事となるので、人を採用し、続けられるように働き掛け、活躍するためのサポートをしていくということです。非常に難しいですが、活躍できる人材を採用することが理想的です」
――そうした仕事を、どれくらいの期間こなしたのでしょうか?
「1年半です。その期間、僕は3年でスポーツの事業を立ち上げると決めていたので、他の人の3倍はやりました。2年目には胃腸炎と盲腸を併発してしまい、一度ダウンしまして、寝ないとダメなんだぞということを経験したことも大きかったです(苦笑)。
キャリアコンサルタントは、企業の社長や役員、人事部長などと対話するので、『新卒だから』という軽い雰囲気では行けません。その企業の人事よりも良い人事戦略をつくれるかどうかで付き合ってもらえるかを判断される厳しいものなので、一般業態の3年で経験することを1年でやる場所だとよく言われていました」
――つまり、その1年半の間に人よりも9倍の経験を積んでいったんですね。
「それを望んでいました。やはり自分にとっては、まだ誰もやっていないことであり、やるべきことであり、やりたいと思っているのは自分ということで、着地点があったことが大きかったです。そして『やりたい』と『すべき』はあっても、『できる』が欠如していたので、そこを早く埋めたかったんです。
本当は新卒でやりたかったのですが、まだ身に付いていなかったですし、自分が生活できる状況でなければ続けられないので、まずは『できる』を手に入れようということでした」
――そして1年半後、『できる』がそろい、いよいよ株式会社マーススポーツエージェントの立ち上げですね。
「そうです。最初は3人から始まりました」
(中編へ続く)⇒https://sjn.link/news/detail/type/report/id/95
【了】
本田好伸●文 text by Yoshinobu Honda
野口岳彦●写真 photo by Takehiko Noguchi
記事提供:サッカーキング
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株式会社マーススポーツエージェント
スポーツビジネス部マネージャー
仲島修平(なかじま・しゅうへい)
1984年5月5日生まれ。専修大学在籍中に、フットサルショップのオープニングスタッフとしてアルバイトで働き、大学卒業後、株式会社ウィルグループに入社。企業の外部人事部機能を担当し、キャリアコンサルタントのノウハウを学ぶ。2008年にマーススポーツエージェントの立ち上げに参画し、アスリートのマネジメント・セカンドキャリア支援、プロチームの人事・事業支援、企業への代理店業などに従事し、2010年秋に実践型集中講座「MARS CAMP」の企画・運営を開始。スポーツに特化した人材発掘、育成、活躍を見据えたサポートを中心に、スポーツと社会を結び付けるあらゆる業態を横断的に手掛けている。
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