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スポーツ中継のテレビ放送局が生き残るためには? これからのメディアに求められるもの

2016年06月04日 コラム Written by 新川 諒

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 今後のプロスポーツにおいては、家でスポーツ中継を見ている視聴者、そしてスタジアムに来場しているファンたちに、目の前に映る試合というコンテンツだけでなく、ITを駆使してさらなるサービスを提供し、新たなプラットフォームを構築していくための戦略が必要とされている。

 レピュコムのデータによると、テレビでスポーツ中継を見ているファンの62%はインターネットに接続しながら観戦をしている。スマートフォンが普及し、多くの人が同時に2つのことを何げなくこなすようになってきた。スポーツを見ながら人々はさまざまなことを並行して行える環境となってきている。

ⒸREPUCOM


 これまでメディアの主役として君臨してきた新聞やテレビに加えて、新たなプラットフォームを築き、往来のメディアの牙城を崩そうとするニューメディアが近年増え続けている。

 スポーツの現場でよく使われる言葉で「ピンチをチャンスに変える」というものがある。
 これは、スポーツ界の発展を支えてきた往来のメディアである現在のテレビ事情にも同じことが言えるだろう。これだけさまざまなメディアが増えてきても、いまだに78%の人々はスポーツの情報を得る手段としてテレビを利用すると答えている。だが一方で、インターネットでスポーツの情報を得る人も68%、そして携帯やタブレットを使用する人も49%を占めており、これからさらに上昇することが予想される。

 テレビは生き残りを図っていくためにさらなる進化、そして新時代のメディアと共存して新たなサービスを提供していくことが必要だ。そのためには戦略的にプラットフォームを作りあげていくことが求められるのではないだろうか。

 スポーツコンテンツに力を入れている放送局は世界各地でも増えてきており、米国ではFOXやNBCといった主流チャンネルがスポーツに特化した24時間専門チャンネルを創設した。そして天然ガスの生産供給において世界最大のロシア企業ガスプロムが所有するロシア初のスポーツ専用チャンネル「マッチTV」が2015年11月に誕生した。
 これまでデジタルで土壌を作り上げてきたメディアもさらなる強化を目指している。世界中に支社を持つイギリスのパフォーム・グループや中国のLeTVやテンセントはスポーツを軸とした動画配信を拡大していくために各国のリーグの放映権を獲得している。
 そして一方では、既存のリーグもOTT(Over the Top)サービスを提供し始めている。放送局に放映権を売るだけでなく、自らも新たなコンテンツを生み出すことで更なる価値を高めている。MLBAM(MLB Advanced Media)、NFLゲームパス、そしてPGAツアーライブがその例に当たるが、IOC(国際オリンピック委員会)も2016年以降には独自のオリンピックチャンネル創設に向けて動いている。

 各メディアがプラットフォーム拡大に動く中、放送局が生き残るためには独自のチャンネルを強化していくだけでは体力がもたないだろう。そのためにはテレビ+αの共存が求められる。

 視聴者を没頭させるためには進化を続けるテクノロジーを使ってファンを中心とする番組制作が必要だ。今までにはないカメラの角度を使ったカメラワークや、これまで視聴者が見ることができなかった舞台裏を提供するなどして視聴者を取り込んでいくのも1つだろう。
 すでにFIAフォーミュラE選手権では「ファン・ブースト」という企画でレース中に視聴者から「好きなドライバーは誰か」というアンケートを集計することでレースを違った形で盛り立てている。
 NBAではスマートフォンのアプリと共同でバーチャル・リアルティー体験を現実のものにしている。2015-16年ポストシーズンでアメリカ産ビール「バドワイザー」社がスポンサーとなり、先着で来場客にバーチャル・リアリティーのヘッドセットを配布する取り組みをクリーブランド・キャバリアーズがNBAで初めて行っている。このヘッドセットはクリーブランド・キャバリアーズの公式アプリと連動することでロッカーの様子やコートサイドの模様など特別映像が見られるようになっている。さらにはフレームがダンボールになっているため、”解体”すればビールを運べる容器にも変貌を遂げる。

 これこそファンを中心に考えた新たなテクノロジーを使った画期的な取り組みだ。現場でもさまざまなアイデアで、アリーナやスタジアムをファンで埋めてもらうためにも数々の努力を続けてきている。

 テレビの新たなる付加価値としても、スマートフォンとの共存は必要不可欠だ。ソーシャルメディアを使ってファンを巻き込む取り組みはすでに各リーグ、球団単位で行われている。ブランドを上手くオンラインのコンテンツに活かし、ファンであるユーザーたちをメンバー会員、そしてチケット・グッズの販売に結びつけ今後は収益化していくことが求められる。

 これまではそれぞれのメディアが単独で収益をあげて成り立っていたが、これからは共存していくことで権利者、ブランドそのもの、そして各プラットフォームが生き残るための仕組みを作っていくことが重要となるだろう。


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<レピュコムとは?>
スポーツマーケティングの分野における情報収集や分析、戦略化を実現するスポーツ専門のコンサルティング企業。
マーケティングとスポンサーシップにおける価値を創造するという顧客のニーズに応えることを目的に、メディアのモニターやマーケットリサーチ、さらにはファンの活動のリサーチを実施している。
2004年の設立以来、今や世界20カ国以上に拠点を持ち、1000を超えるトップブランド、代理店、ライツホルダー、メディアにデータ提供するなど、スポーツ業界の分析領域におけるグローバルリーダーというポジションを確立している。
公式サイト:http://repucom.net/jp/
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【了】

新川諒●文 text by Ryo Shinkawa

幼少時代を米国西海岸で10年過ごし、日本の中学・高校を経て、大学から単身で渡米。オハイオ州クリーブランド付近にあるBaldwin-Wallace Universityでスポーツマネージメントを専攻。大学在学中からメジャーリーグ球団でのインターンを経験し、その後日本人選手通訳も担当。4球団で合計7年間、メジャーリーグの世界に身を置く。2015年からは拠点を日本に移し、主に海外スポーツ中継に携わるフリーランスの翻訳家、さらにはフリーライターとしても活動中。


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