ゴルフのマスターズ・トーナメントでフル活用されたIBMのAI「ワトソン」
2019年04月26日 コラム テクノロジー/デジタル Written by 川内 イオ
タイガー・ウッズの14年ぶり5度目の優勝で幕を閉じたゴルフのマスターズ・トーナメント。1934年にスタートした、世界の精鋭ゴルファーが集うこのツアーで、今回、革新的な取り組みが行われた。
IBMの人工知能(AI)プログラム「ワトソン」が、出場選手のほぼ全てのショット、およそ2万ショットを取り込み、選手がボールを打ってから5分以内に、マスターズのWebサイトで閲覧できるようにしたのだ。ワトソンはこのデータをもとに、トーナメントの各ラウンドで3分間のハイライトビデオ「Round in Three Minutes」を自動制作した。
ワトソンが試験的に導入された昨年のマスターズでは、およそ4000本のショットに対して同様の取り組みが行われた。今回はそれをトーナメント全体にまで拡大した。
過去のマスターズでも各ラウンドのハイライトは作成されていたが、マスターズのスタッフが人力で作成していた。ゴルフはショット数が多いため、ハイライトを制作するのは簡単ではない。IBMとチームを組み、ワトソンがほぼ全てのショットを取り込むことによって、より簡単に、スピードアップしてハイライトを提供可能になった。
ハイライトの自動制作に関しては、ワトソンが選手の動き(ガッツポーズなど)、表情などのビジュアル、観客の歓声などを含めた周辺の音、ボールの位置、ショット、コースなどを総合的に解析して作成する。
どれだけ熱心なゴルフファンといえども、マスターズの全てのラウンド、全てのショットを見るのは難しい。ワトソンの能力を活用して「Round in Three Minutes」を自動制作することで、全てのラウンドを見たいというゴルフファンだけでなく、特定のラウンドの様子をハイライトで見たいライトな層にとっても有益な取り組みになっている。
【了】
川内イオ●文 text by Io Kawauchi
1979年生まれ。大学卒業後の2002年、新卒で広告代理店に就職するも9カ月で退職し、2003年よりフリーライターとして活動開始。2006年にバルセロナに移住し、主にスペインサッカーを取材。2010年に帰国後、デジタルサッカー誌、ビジネス誌の編集部を経て現在フリーランスの構成作家、エディター&ライター&イベントコーディネーター。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンターとして活動している。『BREAK!「今」を突き破る仕事論』(双葉社)を発売中。http://u0u0.net/Ct2N
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