アメフトにVRを活用するアメリカの名門私立大学 ロッカールームの様子も選手の視点で体感!
2017年11月03日 コラム テクノロジー/デジタル Written by 川内 イオ
アメリカのニューヨーク州シラキュースにある私立大学「シラキュース大学」。日本ではほぼ無名に近いが、創立は1870年と古く、カレッジスポーツが盛んなことで知られる。
シラキュース大学のスポーツチームは「シラキュース・オレンジ」と呼ばれ、2003年には男子バスケットボールが全米王者、2004年ではラクロスが全米王者になっている。アメリカンフットボールは市民からも高い人気を誇り、キャンパス内には全米トップクラスの規模を誇る5万人収容のドーム型スタジアム「キャリアー・ドーム」を有する。このドームでアメリカンフットボールの試合が開催される日は、街中がお祭り騒ぎになるそうだ。
このアメリカンフットボールチームが今、「VR」の活用で話題になっている。シラキュース・オレンジは、所属するカレッジフットボールのアトランティック・コースト・カンファレンス(ACC)のなかでも最初にVRを使い始めた。2015年、EON SportsというVR製品の開発を行う企業と契約し、チームのトレーニングに取り入れたのだ。
VR用ヘッドマウントディスプレイ「オキュラスリフト」を装着すると、コーチによって設計されたゲーム内のシナリオをVR上でシミュレーションできるというシステムで、全てのポジションの選手に向けて設定できる。複雑な戦術理解が求められるアメリカンフットボールのなかで、特に攻撃時に司令塔となるクォーターバックのトレーニングに有効とされ、現在ではNFLにもVRトレーニングを導入しているチームがある。
VR利用の先駆けであるシラキュース・オレンジはこの秋、ファン向けにもVRを使い始めた。10月13日に行われたクレムゾン大学との試合で、VR用の動画を撮影。VR用ヘッドマウントディスプレイを装着したファンは、スタジアムの最前列に座っているような視点で試合を観戦できる。さらに、ロッカールームの様子も撮影されており、選手と同じ視点で監督が檄を飛ばしている様子を体感できるという。これで試合の日、ドームに足を運べなかったファンもVR上で試合やチームの様子を観ることができるようになるわけだ。
プロ、アマ、そして競技を問わず、同様の取り組みをしているチームがほとんどないなかで、シラキュース・オレンジの野心的な取り組みは注目を集めている。
【了】
川内イオ●文 text by Io Kawauchi
1979年生まれ。大学卒業後の2002年、新卒で広告代理店に就職するも9カ月で退職し、2003年よりフリーライターとして活動開始。2006年にバルセロナに移住し、主にスペインサッカーを取材。2010年に帰国後、デジタルサッカー誌、ビジネス誌の編集部を経て現在フリーランスの構成作家、エディター&ライター&イベントコーディネーター。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンターとして活動している。
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