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【セミナーレポート】元球団代表が行くアメリカスポーツ漫遊記~NBA、NHL観戦を通じて~

2017年04月16日 インタビュー Written by 深谷 友紀

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 野球・独立リーグの球団代表やサッカー・地域リーグのクラブの取締役を務めた堀米孝二氏が、アメリカ4大プロスポーツリーグや大学スポーツの現状を知るため、実際にロンサンゼルスまで足を運び、NBA、NHLの最新アリーナへと訪れました。また、堀米氏自身のネットワークを活用し、現在UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)4年生でアメフトでは日本人初となるNCAA(全米大学体育協会)1部の公式戦でプレーしている庄島辰尭選手や日本人相手の観光スペシャリストとして活躍されているFRANK KOYAMA氏など、現地に住む日本人からもヒアリングを実施されてきました。

 3月17日に開催されたセミナー、「元球団代表が行くアメリカスポーツ漫遊記~NBA、NHL観戦を通じて~」(主催:株式会社RIGHT   STUFF、会場:株式会社フォトクリエイト   3階セミナールーム)では、その堀米氏からアメリカと日本のスポーツビジネスの違いを独自の目線から語っていただきました。

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■ロサンゼルスの概要
 堀米氏が今回訪問したロサンゼルスは、アメリカ西海岸の南部に位置し、黒人やメキシコ系が多く住んでいる。

「近年は、中国人旅行者が多く見られる。これは日本、アメリカ、オーストラリア共通の現象です」と堀米氏は語った。

■ロサンゼルスのプロスポーツ
 野球(MLB)ではドジャース、エンゼルスがあり、バスケットボール(NBA)にはレイカーズ、クリッパーズがある。アイスホッケー(NHL)はキングスがあり、サッカー(MLS)ではギャラクシーがある。また、アメリカンフットボール(NFL)のチームがしばらくなかったが、2016年にラムズが移転し、2017年にはチャージャーズの移転が決定している。これらのチームの中では、MLBのドジャースが一番人気があるとのこと。

 NBAでは、レイカーズの方がファンは多いと地元の人間は言っているが、観客動員はクリッパーズの方が多いとのこと。 

■ドジャー・スタジアムMLB
 堀米氏は、MLBのロサンゼルス・ドジャースのホーム球場であるドジャー・スタジアムのスタジアムツアーに参加した。

 ドジャー・スタジアムは、1962年建設と古い施設であり、ドジャースというチームもブルックリンからロサンゼルスに移転したのが1958年と、非常に歴史のあるチーム、スタジアムのため目立った新しいシステムの導入はない。しかし歴史の重みが感じられるように施設内に資料館を設置、スタジアムツアーでそれらを披露しているとのこと。

「よく言えば歴史があるが、景色がきれいといったほかは、これといった特徴がないというのが正直なところ」と堀米氏は語った。

 ドジャー・スタジアムでは、スタジアム入場口付近にグッズショップがあり、シーズンオフの2月でもオープンしている。スタジアムツアー参加者は販売価格より10%OFFで購入できるサービスがある。堀米氏の参加体験から、ツアー参加後の購入がおすすめとのこと。

 スタジアムツアーは約1時間20分で、ナビゲーターがついて説明してくれる(全て英語)。スタンド、記者席、施設内展示スペース、そして最後がグラウンドというコース。ドジャースの歴史が学べる。

 1995年に野茂英雄氏がメジャーデビューを果たして以来、最も多くの日本人が観光に訪れた球場と称される。そのためか、ドジャースに在籍した日本人選手は何名かいたが、写真が飾られてあるのは野茂氏のみだという。

 堀米氏が参加した当日は、ツアー参加者26人中、日本人が6~7人参加していて、そのうち半分が学生と思われるとのこと。また、ツアーを通して参加者への写真撮影のサービスが印象的だったと堀米氏は感想を述べている。

 ドジャースの観客動員は2014年から3年連続でMLB1位を記録しているとのこと。

■ステイプルズ・センター試合会場視察(NBANHL
 今回の訪問のメインにあたる屋内施設ステイプルズ・センター(Staples Center)はバスケットボールやアイスホッケーのスポーツイベントの他コンサートなども行われている。

 堀米氏は3日間訪問し、1日目はNBA(レイカーズ主催)、2日目もNBA(クリッパーズ主催)、3日目はNHL(キングス主催)の試合を観戦した。

 驚くべきことは、ステイプルズ・センターのデコレーションがチームによって違っていたということだ。グッズ販売なども含めて全て入れ替わっているとのこと。

 アリーナへの入場チェックは、金属探知器による検査など厳しい体制になっている。これは近年の傾向であるとのこと。

■ITを活用したマーケティング
 ITを使った顧客情報の収集は、2年前に堀米氏がアメリカに視察した時よりもさらにその重要性を増しており、アメリカではもはや当たり前のことになっているようだ。

 ステイプルズ・センター内には無料で使用できるWi-Fiが設置されており、簡単な登録で利用できるが、その際にメールアドレスの入力が必須。登録を済ませると早速メールが送られてくる。(3日間は無料で使用できることを確認済みだが、それ以降も無料で使用できるかは確認できていないので分からないとのこと)

 会場内では抽選申し込みチケットをスタッフが無料で配布している。来場者はチケットを受け取り、そこに記載されている番号を機械に入力。さらに、名前だけでなく「来場回数」や「同伴者」「年齢」「職業」なども入力する画面が表れる。来場者による機械への入力のため、マンパワーをかけずに顧客情報を収集することが可能となっている。

 入力者の中から抽選で試合観戦チケットが当たる。

 またアリーナ内ではさまざまなアトラクションが用意されていて、メールアドレスを教えれば、アトラクションに参加できる。

「チームが違ってもアトラクションは一緒だった。アトラクションは何かしらの繋がりをもって行われていると考えられるが、住所、メールアドレスなどを入力するのに手間がかかる」と堀米氏は語った。

■観客を巻き込んだ参加型イベントの充実
 観客動員数は3球団ともほぼ同じで、さほど差は見られなかったという。NBAの2チームに関しては、「レイカーズの方が知名度は高いが、クリッパーズの方が観客は多い。実際見比べてみると観客数の見た目はあまり変わらない印象。レプリカユニフォームはレイカーズが圧倒的に多く、クリッパーズは少なく感じた」と堀米氏は語っている。

 アリーナで試合観戦している人もいれば、コンコースや売店で食事している観客も多数見られた(特にキングス)。試合時のサービス(グッズプレゼント)はクリッパーズが最多。スタンドへの投げ込みや天井からのパラシュート落下も実施している。

 ハーフタイムでズンバ(ZUMBA)を踊るショーや、優勝者にはプリウスがもらえるフリースローゲーム(難易度は高そう)、大型ビジョンに映された隣同士の観客がキスするキスカムなど、さまざまなイベントが行われていた。

 また、座席については「席間は狭い、アメリカサイズではない」と堀米氏は感想を述べている。

 なお、プレー中に離席することはできない タイムアウトなどプレーが止まった時のみ許されるとのこと。

 堀米氏が今回特に興味を引かれたのが、観客からお金を集め、集まったお金の半分は慈善団体へ寄付し、残りの半分はお金を出した人の中から抽選で1人が総取りするという観客参加型イベントだった。アメリカでは非常に盛り上がっているとのこと。堀米氏はこのイベントが非常に面白く感じたという。何とかして日本でできないかと検討したが、日本では法律違反に当たるので無理とのこと。

■新スタジアムの需要(NFL、MLS)
 NFLでは、2016年セントルイスからラムズが、2017年にはサンディエゴからチャージャーズがロサンゼルスに移転。両チームで共用する2019年完成予定の新スタジアム建設の話があるという。

 また、MLSは最近人気が高まってきており、その影響でスタジアム建設ラッシュが起きている。サッカー専用の新スタジアムがエキスポパーク内に2018年完成予定とのこと。

 ロサンゼルス市を巻き込み、スタジアムを中心としたにぎわいのある街づくりを推進している。

「エキスポパーク内でサッカーの禁止のマークが表示されている。禁止になるほどエキスポパーク内でサッカーをする人たちが多いのだろうと推測する。このことからロサンゼルスでのサッカー人気は高まっていると考えられる」と堀米氏は感じたという。

■地域密着活動の事例
 MLBがカリフォルニア州コンプトンに開設したアーバンユースアカデミーは、子どもたちに対する無料の育成プログラムを提供している。

 日曜日の昼間に堀米氏が施設訪問したところ、野球、ソフトボールの試合があったようで、子どもたち、保護者が集まってきていたとのこと。

 施設を訪れていた保護者の一人に堀米氏がヒアリングしたところ、「MLBが地域のためにこういう施設を造ってくれて非常にありがたい。MLBとしてはファンを増やしたいのだろうがそれでもいい。野球教室もやってくれるのもいい」とのことだった。

「コンプトンという場所自体、ロサンゼルスの中でも特に治安の悪いところとされているが、最近街並みもキレイになってきたとのこと(LA在住日本人からの情報)。このMLBの取り組みと無関係ではないような気がする」と堀米氏は感想を述べている。

 映画のメッカであるハリウッド通りではバーやギフトショプが多数並ぶ。それらほとんどがスポーツを絡めており、「スポーツバー」もしくは「スポーツグッズ販売」を行なっている。映画の街でありながらスポーツを楽しむことができるようになっている。

 通りに面するお土産屋でも必ずと言っていいほどチームウェアを取り揃えている。

 バーでもスクリーンにはスポーツを、店内のデコレーションにはスポーツチームのフラッグを掲げ、必然的にスポーツバーとなっている。

 ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドの中でも、バスケットボールのフリースローで遊べるアトラクションが設置されているなど、スポーツが楽しめるようになっている。エントランス前のシティウォークにはドジャースの店舗もあった。テーマパークとスポーツ、一見違うようであるがともにエンターテインメントビジネスという共通点を持っている。

「日本ではないがすごいと感じる。例えるならば、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行ったら阪神タイガースのグッズが売られているようなもの。また、ショップでも、メールアドレスを登録すると、毎日のようにドジャースの情報が流れてくる。いかに情報発信するかという意図がうかがえる。何も関係ないように見えるが、それだけスポーツが浸透している」と堀米氏は語った。

■大学視察(UCLA
「日本でも、アメリカのように大学スポーツの価値を上げていこうという施策が国の方から出始めているが、現場ではあまりピンと来ていない。逆に懐疑的な意見が多い」と堀米氏は日本での現状を説明した。

アメリカではどうなのだろうかと堀米氏はUCLAの庄島選手に聞いたところ、
・ロサンゼルスではUCLAとUSC(南カリフォルニア大学)がライバル関係。対戦時には対抗意識を煽るようにして盛り上がる。
・日本の大学の部活との一番大きな違いは、「アメリカは部活ではなくもはやプロ(ビジネス)。クビになる可能性もある」こと。
・シーズンオフは週末ごとに、部単位で地域貢献活動を実施。地元の小学校に行き生徒たちと触れ合っている。
・スポーツ特待生と一般学生との間にカベはあるようだが、基本的にはスポーツ特待生に対してのリスペクトがあり「こいつはスゴイ!」というように認められているという。(日本の大学のスポーツ特待生も、一般学生に認められるようにならなければいけないと堀米氏は感じている)
・スポンサーが来年、アディダスからアンダーアーマーに変更予定。
とのことだった。

 大学のアイデンティティー確立のためには、ユニフォーム等をスクールカラーで統一することは不可欠とのことだが、日本では代表のユニフォームですら統一されていないことに堀米氏は疑問を投げ掛けた。

 堀米氏が大学に訪問したのは日曜日。小学生の集団が学内に多く見られた。この日だけでなく週末は地域に開放し、社会科見学の一環で小学生や中学生が多く訪れるという。

 堀米氏が訪問した当日はバスケットボールの公式戦が学内体育館で開催されていた。チケットはソールドアウト、入場口には金属探知機が設置されるなどプロ並みの運営で実施されており、規模も何もかも違った。

「大学バスケットの試合でも入場者チェックは厳しい。かなりナーバスになっている印象」と堀米氏は語った。

■オーストラリアの状況
 現地に行って気付くのは、オーストラリアでは、小学生・中学生の間ではサッカーの人気が高いということだ。オーストラリアといえばラグビーという印象だが、小中学生がやるスポーツではベスト10に入っていないという。アメリカでアメフトのけがや脳しんとうが懸念されているように、オーストラリアでも小さい子どもたちにとってラグビーは危険だということで、ラグビーをやる前にサッカーを始める傾向にあるとのこと。

「オーストラリアに行って現地で見て初めて実感できた」と堀米氏は語った。

 日本ではなじみがないがクリケットがオーストラリアでは盛んで、競技人口が世界で2位。街の本屋でもクリケット関係の本が多く並んでいるという。

 平日の夜にクリケットをやる人が集まるインドアクリケット場は超満員だという。

 堀米氏は最後に、「このように現地へ視察に訪れる場合に重要なことは、常に『なぜ?』と疑問を持つこと。例えば、『なぜ入口に金属探知機が置いてあるのか?』など、一つひとつ考えてほしい。答えが出ないこともあるが、人に聞いたり調べたりすることで理由が分かっていくので、一つひとつ疑問を持ってみてほしい」と語り講義を締めた。

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 日本でもプロバスケットボールリーグのBリーグが始まったことによりアリーナ施設の需要が高まっている中、堀米氏の話は非常に興味深いものであった。

 現地へなかなか行くことができない人にとっては、堀米氏の生の体験談はありがたいものだった。

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<講師プロフィール>
堀込孝二(ほりごめ・こうじ)
特定非営利活動法人スポーツファンデーション代表理事
和歌山大学観光学部八島研究室共同研究員

2006年同団体を自ら設立、代表理事に就任。
ジャンルにとらわれずさまざまなスポーツに関わる。2011年より四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズ球団代表に就任、球団副社長時代を含め4年間在籍。2015年より2年間はサッカー地域リーグのアミティエ・スポーツクラブ京都・代表取締役を務めた。現在、阪南大学流通学部スポーツマネジメントコースゼミ講師、日本クリケット協会理事も兼務している。
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【了】
深谷 友紀●文 text by Tomonori Fukatani
1970年生まれ。大学卒業後プラスチック成形メーカーに就職し、2010年よりフリーランスのWebデザイナーに転身、2011年からスポーツライターとしても活動を開始。主にサッカーなど地域スポーツクラブHP製作やサイト更新管理、スポーツ系のWebメディアの運営支援、記事寄稿などを行うなど、自身のスポーツ体験含め、「スポーツを語れるWebデザイナー」として活動中。


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