MLBの開幕直前キャンペーン「This Season On Baseball」 スター選手が続々登場する動画が話題に
2017年04月04日 コラム マーケティング/プロモーション/ブランディング Written by 川内 イオ
アメリカのメジャーリーグベースボール(MLB)が、4月2日に迎える今シーズン開幕の1週間前にスタートしたキャンペーン「This Season On Baseball」。このテーマに合わせてMLBのクリエイティブエージェンシーAnomalyが制作した60秒の動画が、話題を呼んでいる。
アメリカの経済誌『フォーブス』のウェブ版によれば、アメリカでは長らく、MLBはスター選手をマーケティングに活用しきれていないという声があったそうだ。
その批判に応えるように、「This Season On Baseball」とタイトルを冠した動画は、若手のスター選手に焦点を当てた構成になっている。
フロリダ州とアリゾナ州で行われた春季キャンプ中に撮影されたこの動画には、クリープランド・インディアンスのフランシスコ・リンドール、シアトル・マリナーズのフェリックス・ヘルナンデス、ワシントン・ナショナルズのスティーブン・ストラスバーグなどそうそうたる選手が20名以上登場。それぞれの投球シーン、バッティングシーン、トレーニングシーンなどが短いタイミングで次々と現れる、スタイリッシュな動画だ。
もし日本で同様の動画を製作する場合、野球でもサッカーでも、全チームの選手を登場させるだろうが、MLBの動画には一部のチームの選手しか登場しない。
それは、この動画が単に注目選手の紹介動画ではなく、ストーリーを持っているからだ。
冒頭では、昨シーズンのシーズンMVPに輝いたロサンゼルス・エンゼルスの外野手マイク・トラウトが登場し、巨大なタイヤを転がし始める。その次に「メジャー最強左腕」と称されるロサンゼルス・ドジャースのクレイトン・カーショウがマウンドから剛速球を投げ込む。スピードガンには「DANG!」(すげー!)と表示されるが、ナレーションは「そんなことは関係ない」と続き、「飛ばし屋」のジャンカルロ・スタントン(マイアミ・マーリンズ)がホームランを放つシーンとなる。
それぞれ別の場所で撮られた映像なのに、スター選手のしのぎ合いをイメージさせるのだ。全チームの選手をまんべんなく登場させるのではなく、本当のスター選手のみが登場することで、シーズン開幕に向けてMLBファンのワクワク感を煽っているのである。
この動画は、MLB.comのソーシャルプラットフォームに掲載されるだけでなく、ESPN、MLBネットワーク、TBS、FOXスポーツ、FS1の全国放送中に流される予定。
日本のプロ野球やJリーグでも、これぐらい思い切ったプロモーション動画を見てみたいと思うのは、僕だけではないだろう。
【了】
川内イオ●文 text by Io Kawauchi
1979年生まれ。大学卒業後の2002年、 新卒で広告代理店に就職するも9カ月で退職し、2003年よりフリーライターとして活動開始。2006年にバルセロナに移住し、主にスペインサッカーを取材。2010年に帰国後、デジタルサッカー誌、ビジネス誌の編集部を経て現在フリーランスの構成作家、エディター&ライター&イベントコーディネーター。 ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンターとして活動している。
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