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世界のスポーツ産業の中心は中国に? 中国が描く90兆円の国内スポーツ産業

2016年12月06日 コラム Written by 新川 諒

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 2019年にラグビーワールドカップ、2020年に東京五輪を控える日本が、2025年までに国内のスポーツ産業を15兆円に拡大する目標を掲げたのはつい最近の話である(2016年6月)。だがアジアでスポーツ熱に盛り上がるのは、日本だけではない。近隣国の中国でもスポーツ産業を拡大させるために国内への投資、そして海外への進出を推進しており、中国政府はその産業を2025年までには約90兆円に拡大することを2014年の10月に発表している。

 中国では2019年にFIBAバスケットボール・ワールドカップ、そして2022年には冬季五輪が北京で開催される。これが実現すれば、北京は2008年夏期五輪を開催しているため、夏冬の五輪を両方開催する初めての都市となる。

 人口は日本のおよそ10倍といわれる中国を世界中のクラブ、連盟、リーグ、スポンサー企業など、スポーツに関わる多くの人が目を向け、中国も国としてスポーツの世界での存在感を高めてきている。

 すでにその中国市場で存在感を高めているのが、スペイン・サッカーリーグの強豪レアル・マドリードとアメリカ・プロバスケットボールリーグのNBAだ。ニールセンスポーツによると、中国一人気のあるサッカークラブであるレアル・マドリードは中国の草の根活動にも協力している。教育の分野でサッカーが必修科目として導入され、その活動には国内クラブの尽力も大きいが、国を代表するクラブの1つである広州恒大とパートナーを組んだレアル・マドリードの功績もまた大きい。中国では2030年までに1万人に1つという割合でサッカーグラウンドを作っていくことを目標に掲げており、広州恒大とレアル・マドリードは一部ではすでに始動しているが、最終的にはグラウンド50個分のアカデミー創設に着手している最中である。

 ブラジル代表のフッキや数々のユース代表に名を連ねてきたアレックス・テイシェイラというタレントを破格の高値で獲得し、国内リーグを盛り上げているが、中国ではそれを上回る人気を誇るスポーツがある。ニールセンスポーツの調査によると、中国で一番人気を誇るスポーツはバスケットボールとなっている。

 2002年NBAドラフトの全体1位指名で姚明がヒューストン・ロケッツ入りしたことが大きな転機となり、NBAは2005年から中国にオフィスを構え、本格的に活動を拡大してきた。中国進出する際にNBAは戦略的なパートナーシップを5社と結び、李嘉誠基金会、中国銀行、聯想グループ、中国招商銀行、そしてウォルト・ディズニーが名を連ねた。さらには利益を上げるだけでなく、中国でバスケットボール文化を構築していくことを目指していくことが、当時NBAコミッショナーを務めていたデビッド・スターンの数々のコメントからもうかがえた。

 海外ではヨーロッパ中のサッカークラブやスポーツ関連企業の買収、そして国内ではオンラインをはじめとするメディアが放映権を獲得し、スポーツコンテンツを充実させるなど、着々と国内外でスポーツ産業への存在感を中国は強くしつつある。

 さらに中国でのビジネス拡大を目指す海外クラブやリーグも草の根活動から協力するなど、その本気度がうかがえる。日本では2020年東京五輪を開催するために日々追われている様子が伝わってくる。だが長期的な視点でスポーツ文化とその産業を構築していかないことには、2020年東京五輪という一大イベントが終わった頃にはすでにスポーツ産業の多くは中国に根を張ってしまっている事態になりかねない。

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<ニールセンスポーツとは?>
世界最大のリサーチ会社ニールセンが2016年6月21日、スポーツ視聴測定、メディア評価およびマーケットインテリジェンスなどのスポーツマーケティングリサーチ&コンサルティングサービスをワンストップで提供する世界最大企業レピュコムを買収したことにより誕生。
グローバル規模でのスポーツ関連サービスを拡大、成長著しいスポーツ市場におけるアナリティクスやインサイトの提供においてトップの地位を確立する。
スポーツに対するスポンサーシップ投資は現在、世界規模で 600億ドルとますます成長しており、ニールセンスポーツでは、スポンサーシップ効率からファン層データの可能性に至るさまざまなソリューションを、ニールセンの消費者行動およびメディア利用に関する知識と組み合わせられる、という理想的な立場を生かして、事業の商業的な成功の最大化を支援している。
公式サイト:http://nielsensports.com/jp/
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【了】

新川諒●文 text by Ryo Shinkawa
幼少時代を米国西海岸で10年過ごし、日本の中学・高校を経て、大学から単身で渡米。オハイオ州クリーブランド付近にあるBaldwin-Wallace Universityでスポーツマネージメントを専攻。大学在学中からメジャーリーグ球団でのインターンを経験し、その後日本人選手通訳も担当。4球団で合計7年間、メジャーリーグの世界に身を置く。2015年からは拠点を日本に移し、主に海外スポーツ中継に携わるフリーランスの翻訳家、さらにはフリーライターとしても活動中。


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