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パラ・スポーツのスポンサーとなる意義とは何か?

2016年10月15日 コラム Written by 新川 諒

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 「多くのブランドが社会問題に対するアプローチ方法を模索している中、パラリンピックがそれらにとって絶好の機会であることは確かである」

 こう発言したのは、ニールセンスポーツのグローバル戦略の責任者を務めるグレン・ラビット氏である。

 2012年のロンドン・パラリンピックでは、障がいや障がい者に対する考え方を改めるきっかけをつくった大会となり、2008年の北京大会に比べても関心や認知度は大きく飛躍した。ニールセンスポーツのデータによると、ロンドン大会前の5月と大会後の9月では、34%から64%へと障がいに対する意識が変化した。大会閉幕後は、イギリスにおける68%の人がパラリンピックに勇気づけられ、48%がパラリンピックに関する報道を増やしてほしいとも答えている。

 ロンドン大会でのパラリンピック・ムーブメントはIPC(国際パラリンピック委員会)の認知度拡大にもつながり、IPCのブランドロゴである「Agitos」(アギトス)の認知度は大会前の50万人から閉幕後の2000万人へと広がったというデータも出ている。

 パラリンピックへの長期的な関心の向上は、他のパラ・スポーツ大会への認知・関心の向上にも繋がっていくはずだ。2017年には、ロンドンでのパラ陸上競技世界選手権やメキシコでのパラ世界水泳選手権などの開催が予定されている。

 パラリンピックはすでに強力なコマーシャルパートナーを獲得している一方で、IPCは各国のパラリンピック委員会に対しても商業的に発展できるよう支援している。いくつかのワールドワイドパートナーは各国の委員会ともパートナー契約を結んでおり、トヨタ自動車はすでに2017年から2023年までの契約を結んでいる。

 パートナーの中には、治療用医療器具とリハビリ・モビリティー面のヘルスケア・プロダクトを扱うオットーボックなど、事業そのものがパラリンピックに関連する会社もあれば、東京大会の2020年以降もパートナーとなるサムスン電子や、IPCにとって初めてのグローバルスポンサーとなったVISAなど事業そのものがスポーツに直接関係ない企業もある。

 IPCの活動資金の約半分がパラリンピックで得られた収入である。その莫大な利益を生み出す要因の一つとなったスポンサー企業にとってパラリンピックに資金を投じることにどんなメリットがあるのだろうか。

 IPCの関連団体であるAgitos Foundation(アギトス財団)は、パラリンピックの世界中からの高い注目度を利用して、良いブランドイメージをスポーツや社会貢献との関わりを通じて構築することを目指しているブランドに、絶好の機会を提供するとニールセンスポーツは分析している。

 スポンサー企業だけではなく、放送局にとってもパラリンピックやIPCと活動を続けていくことで新たなブランドを構築することができる。

 イギリスの公共放送チャンネル4は非営利法人によって運営され、マイノリティー映画製作への投資や若者や社会的少数派を対象とした放送に特徴がある。チャンネル4はロンドン大会に向けて世界中から注目されることとなる「スーパーヒューマン」と題したコマーシャルを制作した。

 ダイバーシティーやイノベーション、多種多様な考え方を尊重する制作を心掛けるチャンネル4にとってはパラリンピックの独自性が、テレビ視聴者が求めるコンテンツを生み出すことになると考えた。チーフマーケティング&コミュニケーションオフィサーを務めるダン・ブルーク氏は、「チャンネル 4は障がい者雇用の分野でトップクラスの企業になることを目標としています」と語り、コンテンツとしてではなく人々の障がい者に対する意識を変える重要性もさまざまな戦略から打ち出している。

 企業のサービスにパラリンピックがいかにフィットするのかということを考えること。それがスポンサーをすることへの意義となるのではないだろうか。ミレ二アル世代の5人に4人は社会貢献をしているブランドの商品をより購入するとデータも出ている。

 これから2020年東京パラリンピックだけではなく、世界各地ではIPCの大会が繰り広げられていく。企業にとってもスポーツにスポンサードする意義が問われる今、あらためてパラリンピックにも目を向けてみることで新たな可能性が生まれるかもしれない。


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<ニールセンスポーツとは?>

世界最大のリサーチ会社ニールセンが2016年6月21日、スポーツ視聴測定、メディア評価およびマーケットインテリジェンスなどのスポーツマーケティングリサーチ&コンサルティングサービスをワンストップで提供する世界最大企業レピュコムを買収したことにより誕生。
グローバル規模でのスポーツ関連サービスを拡大、成長著しいスポーツ市場におけるアナリティクスやインサイトの提供においてトップの地位を確立する。
スポーツに対するスポンサーシップ投資は現在、世界規模で 600億ドルとますます成長しており、ニールセンスポーツでは、スポンサーシップ効率からファン層データの可能性に至るさまざまなソリューションを、ニールセンの消費者行動およびメディア利用に関する知識と組み合わせられる、という理想的な立場を生かして、事業の商業的な成功の最大化を支援している。

公式サイト:http://repucom.net/jp/
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【了】

新川諒●文 text by Ryo Shinkawa

幼少時代を米国西海岸で10年過ごし、日本の中学・高校を経て、大学から単身で渡米。オハイオ州クリーブランド付近にあるBaldwin-Wallace Universityでスポーツマネージメントを専攻。大学在学中からメジャーリーグ球団でのインターンを経験し、その後日本人選手通訳も担当。4球団で合計7年間、メジャーリーグの世界に身を置く。2015年からは拠点を日本に移し、主に海外スポーツ中継に携わるフリーランスの翻訳家、さらにはフリーライターとしても活動中。


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