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米国チームが30年ぶりにF1参戦! 企業がF1に進出する魅力とは?

2016年04月23日 コラム Written by 新川 諒

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 2016年のF1シーズンがついに開幕した。3月20日、オーストラリアでのシーズン開幕戦でデビューを果たした「ハースF1 チーム」が早速6位でポイント獲得という最高のスタートを切った。

 2012年にF1は5年ぶりに米国の地に戻り、ハースは米国チームとしては1986年以来となる参戦となった。日本ではあまり知られていないかもしれないが、米国でのモータースポーツ人気はすさまじい。絶大な人気を誇る「NASCAR」(※1)にハースはすでにチームを所有している。そしてNASCARだけではなく、米国では日本人ドライバーが参加している「インディカー・シリーズ」(※2)もある。

 ※1:NASCAR(The National Association for Stock Car Auto Racing/全米ストックカーレース協会)が主催する、アメリカで最も人気のあるモータースポーツ。使用されるマシンが一般の市販車がベースであることから、「ストックカーレース」と呼ばれるようになった。
 ※2:IndyCarが主催する、アメリカ大陸最大のオープンホイールカー(フォーミュラカー)レース。F1とよく似ているが、F1は自チームで製造した車体でのみ参加が認められるのに対し、インディカーでは市販の車体を購入して参加するなどのレギュレーションが異なる。


ⒸREPUCOM


 絶大なモータースポーツ人気を誇る米国がついにF1の舞台に戻ってきた。それでもオートスポーツの公式サイトによると、ハースには2月末時点でスポンサーがほとんど付いていないと報道された。F1初参戦となるハースのスポンサーに付くのはリスクが伴う。

 レピュコムのデータによると、上位を走るチームは他に比べると、中継でのスポンサー露出価値が50パーセントも上回り、スポンサー企業にとって走行順位は大きく影響してくる。下位を走るチームのスポンサー企業は費用対効果が薄れるだけでなく、エンジントラブルやクラッシュが起こればマイナスイメージが付くリスクも伴う。F1初参戦となるチームのスポンサーになることは、リスクの方が大きい。

 それでも企業がハースにスポンサードするメリットは十分にあるはずだ。2016年のF1シーズンは過去最多となる21レースが世界中で予定されている。今年はホッケンハイムのドイツグランプリ、そしてアゼルバイジャン共和国の首都バクーでも初のレースが開催される。ヨーロッパ、アジア、そしてオリンピックイヤーの開催地でもあるブラジルでもレースは行われる。世界へブランドを拡大していくことを試みる企業としては格好な舞台となる。

 世界中を舞台にしているものの、米国はF1の視聴者が世界で7番目に多い地域というリサーチ結果も出ている。米国でのモータースポーツ人気を物語っている結果ではないだろうか。ハース社は米国で最大の工作機械メーカーであるため、レースで良い結果を出すことが直接自社のブランド力向上につながる。そのためF1ハースのオーナー、ジーン・ハースはスポンサーを必死に集めている状況ではないとコメントを残しているが、多くの資金を要するF1を戦っていくためにスポンサーはいるに越したことはないはずだ。

 2016年シーズンはこれまでF1に関わってきた多くの企業がスポンサードするチームを変えてきた。時計メーカーのタグ・ホイヤー、カシオ、スポーツ用品メーカーのプーマ、自動車ブランドのインフィニティがその例にあたる。

 日本の電子機器メーカー・カシオ計算機は2016年シーズンから「スクーデリア・トロ・ロッソ F1チーム」と2年のオフィシャル・スポンサー契約を結んだことを発表した。その目的として、カシオの高性能ウオッチの「EDIFICE(エディフィス)」のプロモーションを積極的に推進していくと、自社ホームページに記載している。スクーデリア・トロ・ロッソには弱冠18歳のマックス・フェルスタッペン、カルロス・サインツというF1界でも注目を集めているドライバー2人が所属している。若いドライバー2人を抱えるスクーデリア・トロ・ロッソとカシオが目指すブランドイメージである、“若者に向けた躍動感”が一致した形だ。

 レピュコムのデータでも、スクーデリア・トロ・ロッソがF1チームで一番好きと答えているファンの47パーセントがハンドバッグなどの高級品を所有していると答えている。このようなデータからも、高性能時計の売り上げ・ブランドイメージアップを目指すカシオがスポンサードするチームを、目指すターゲット層をファンに持つ同チームへと変更する意図が理解できるだろう。

 世界へ通じるF1の特性に魅力を感じ、新たなにF1チームのスポンサーに加わった企業は今年も多く存在する。シャンパンブランドの「シャンドン」、高級時計ブランドの「リシャール・ミル」が「マクラーレン・ホンダ F1チーム」と。そして「ザウバー F1チーム」はプレミアムスポンサーを4社加え、その中にはマーケット・経済専門チャンネルのCNBCが含まれている。アメリカの放送局が米国チームのハースではなく、ザウバーにスポンサードしたのは、自国チームとしては残念だろう。だが米国企業もF1を世界展開していくためのプラットフォームと考えていることを証明しているともいえる。

 世界にブランドを展開することを目指す企業にとってF1は魅力ある舞台だ。もちろん動く金額も大きいだけにリスクは伴うが、F1デビュー戦で6位と上々のスタートを切ったハースにとっては、スポンサー獲得に向けてのギアチェンジになるか注目したい。


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<レピュコムとは?>
スポーツマーケティングの分野における情報収集や分析、戦略化を実現するスポーツ専門のコンサルティング企業。
マーケティングとスポンサーシップにおける価値を創造するという顧客のニーズに応えることを目的に、メディアのモニターやマーケットリサーチ、さらにはファンの活動のリサーチを実施している。
2004年の設立以来、今や世界20カ国以上に拠点を持ち、1000を超えるトップブランド、代理店、ライツホルダー、メディアにデータ提供するなど、スポーツ業界の分析領域におけるグローバルリーダーというポジションを確立している。
公式サイト:http://repucom.net/jp/
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【了】

新川諒●文 text by Ryo Shinkawa

幼少時代を米国西海岸で10年過ごし、日本の中学・高校を経て、大学から単身で渡米。オハイオ州クリーブランド付近にあるBaldwin-Wallace Universityでスポーツマネージメントを専攻。大学在学中からメジャーリーグ球団でのインターンを経験し、その後日本人選手通訳も担当。4球団で合計7年間、メジャーリーグの世界に身を置く。2015年からは拠点を日本に移し、主に海外スポーツ中継に携わるフリーランスの翻訳家、さらにはフリーライターとしても活動中。


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