世界大手タイヤメーカーが小規模マラソン大会をスポンサードする理由とは?~社内活性を目的としたアクティベーション~
2020年08月14日 コラム スポンサーシップ/パートナーシップ Written by SPODIGI
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今回は、米国の大手タイヤメーカー「GOODYEAR」(グッドイヤー)が大会設立から冠スポンサーを務める小規模マラソン大会「アクロンマラソン」の事例を紹介します。
(出典:SPODIGI『世界大手タイヤメーカーが小規模マラソン大会をスポンサードする理由とは?~社内活性を目的としたアクティベーション~』2020年7月31日)
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■大手タイヤメーカー「GOODYEAR」のアクティベーション
スポンサー権利の活用、いわゆる「アクティベーション」の目的として、認知向上やブランディング、CSR、ホスピタリティーは一般的だろう。しかし、社内を活性化させ、社員の帰属意識の向上や離職防止を図る「インナーマーケティング」を主目的としたスポンサーシップがあることも忘れてはならない。
その具体例として、米国の大手タイヤメーカー「GOODYEAR」と小規模マラソン大会「アクロンマラソン」の事例が挙げられる。同社はブリヂストン、ミシュランに並ぶ世界3大タイヤメーカーの一社で、米国オハイオ州アクロンに本社を構えている。そして、2015年にアクロンマラソンの運営団体と共に、ハーフマラソンと10キロマラソンの大会を新設し、設立時から長らく大会の冠スポンサーを務めてきた。
世界最大のフルマラソン大会といわれるニューヨークシティマラソンの参加者数は約5万人を超える。一方、同大会の参加者は約3500人(ハーフマラソンと10キロマラソン)と、その規模感には大きな違いがある。その点からも、広告宣伝媒体としての効果は低いことは明白だ。
そんな同大会にスポンサードする理由こそ、「社内活性」にある。同社は、2015年のスポンサー契約締結以降、以下4つの活動を中心にさまざまなアクティベーションを行ってきた。
1.マラソンの発着点を本社に
この大会では、冠スポンサーとして同社のロゴがさまざまな場所で掲出されるだけでなく、そのスタートとゴールがGOODYEARのアクロン本社で行われる。そのため、毎年大会準備期間になると、社員はその存在を強く感じることになる。
大会の存在を目に入りやすくする設計は、スポンサードする意義を感じてもらったり、支援への共感を得る上で重要だ。また、地元での開催ということで、地域活性に貢献している企業に勤めている「誇らしさ」を感じてもらう効果も期待できる。
2.ボランティア
大会運営スタッフとして、社員のボランティア派遣も実施している。これは、同僚や普段話さない社員との新たなコミュニケーションを生み、関係性向上につながる。また、「社会に貢献したい」と考える社員に対して、こうしたボランティア機会を提供することで、モチベーションUPも見込めるだろう。
加えて、研修の様子や当日ボランティアにいそしむスタッフの様子をソーシャルメディアに投稿している。こうした発信は対外的なPRの目的もあるが、他の社員が同僚の頑張る姿を見ることで「あいつ頑張ってるな、楽しそうだな」といった刺激にもつながるだろう。
Today, we trained @Goodyear_News associates on their race day volunteer roles! More than half of the volunteers on Saturday are Goodyear associates!??
— Akron Marathon (@AkronMarathon) August 6, 2019
Goodyear is also represented on the #BlueLine with 178 runners! ??#runAkron #BurnRubber #GoodyearBetterFuture pic.twitter.com/r0csOqo70z
3.社員ランナーのトレーニング
ランナーとしてマラソンに参加したい希望者を募り、会社がその参加費を負担。さらには、同社のヘルス&ウェルネスチームは、マラソン未経験の社員に対して、社内の経験者が定期的にトレーニングするプログラムの整備を行った。これも、未経験者に安心して参加してもらえるだけでなく、社員同士の新しいコミュニケーションを活性化できる。
「健康経営」といった言葉を聞く機会が増えていることからも、社員の健康を増進し、会社の生産性向上を目指す経営手法には注目が集まっている。そのため、こうしたマラソン大会への参加を促すことは、健康経営を推し進めることにつながるだろう。
4.壮行会の実施
ランナーやボランティアスタッフに参加するスタッフのための壮行会を開催した。この壮行会では、同社のCEO、リチャード・J・クラマーや、マラソン大会の創設者から激励のメッセージが述べられた。また、オリジナルの記念シャツが参加者に配布された。
こうした壮行会も、マラソン大会の参加者のモチベーションUPや、他の社員の「自分ゴト化」に有効だろう。また、CEOが直々にメッセージを述べる機会を設けることで、経営者と社員の距離が縮まるきっかけとなり、帰属意識を高めることにつながる。
■小規模スポーツ大会へのスポンサーシップこそ、社内活性を主目的に
GOODYEARは、社員が「選手」と「ボランティア」のいずれかの形で関わる機会を設けることで、社員同士のコミュニケーション促進や健康経営の増進、モチベーションUP、帰属意識の向上などを図っている。
これは、大規模なスポーツ大会ではなく、比較的小規模で、地元で行われるマラソン大会へのスポンサードであることが大きく関係している。より大きな規模となれば、他のスポンサーとの兼ね合いもあり、これほど同社の社員を関与させることは難しいだろう。
その意味で、広告媒体としての価値がそこまで高くないことを踏まえると、こうした小規模のスポーツ大会へのスポンサードは、社内活性(=インナーマーケティング)の用途での活用が最適ともいえる。特に、同社のように「地元開催」のスポーツ大会ともなれば、社内活性だけでなく、その地域とのつながりを醸成できる点でも魅力的だ。
その上で重要となるのが、社員をうまく巻き込むことだ。どうしてそのスポーツ大会にスポンサードするのか、社員にどのように関わってほしいのか、そうした「スポンサードへの想い」を明確に伝え、「自分ゴト化」させることが成功のカギを握る。場合によっては、社内で人望の厚い社員を巻き込むのも効果的だろう。
併せて効果測定も忘れてはならない。参加者の計測はもちろん、参加社員やその同僚にアンケートを実施し、コミュニケーション活性、モチベーションUP、帰属意識向上など、特に重視したい項目について、どのような効果が生まれたか振り返ることが重要だ。同社のように、長年継続的にスポンサードを行う場合は、毎年ブラッシュアップしていくことで、さらなる「貴重な体験」を提供できるだろう。
■広告宣伝だけではない、戦略的なスポンサーシップの選択を
GOOEYEARは、他にも米国の人気自動車レース、NASCARへのスポンサードも行っている。これは、カーレースとタイヤという親和性の高さが前提にあり、そのファンからの認知度やブランドイメージ向上が主目的だろう。その一方で、社内活性の目的でアクロンマラソンのような大会へのスポンサードも行っていることから、各スポンサーシップを戦略的に選定していると考えられる。
いずれの目的においても、そのスポーツの特性を理解することが重要となる。特に、今回のように社内活性を目的にする場合、どういった方法で社員を関わらせることができるのか、どんな体験を提供できるのか、そうした点を明確にし、具体的なアクティベーションを考案していくべきだろう。
今回の事例のような「社内活性を目的としたスポンサーシップ活用」、「小規模スポーツ大会への戦略的スポンサード」が増えていくことを楽しみにしたい。
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【了】
記事提供:SPODIGI
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