マンUの若きエース、世界的ラッパーのジェイ・Z率いるタレントエージェンシーと契約
2020年06月29日 コラム アスリートマネジメント/セカンドキャリア Written by 川内 イオ
絶大な人気を誇るラッパー、 ジェイ・Zが設立したタレントエージェンシー「Roc Nation(ロック・ネイション)」が、イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドに所属するマーカス・ラッシュフォードと契約を結んだ。
マンチェスター・ユナイテッドの背番号10を背負うラッシュフォードは、最近、サッカー以外でイギリスのメディアを賑わせていた。
イギリスでは、新型コロナウイルスの影響で学校の封鎖が行われていた期間中、低所得世帯の約130万人の児童を対象に、食料品が買える利用券が配布された。しかし、7月後半から始まって9月1日まで続くおよそ6週間の夏休み中は対象外とされていた。
貧しい母子家庭で育ったラッシュフォードは、この問題に対して6月15日、自身のTwitterでイギリスの全下院議員に向けて「この国では子どもが空腹になるべきではない。それは受け入れられない」と投稿。
同時に、貧しい人たちをサポートするチャリティー活動「フェアシェア」への寄付を呼びかけたところ、大きな注目を集め、2000万ポンド(約28億円)に達した。ラッシュフォードの言動と反響は政府を動かし、夏休み期間中にも利用券の配布が決定した。
この背後で、ラッシュフォードをサポートしていたのが、ロック・ネイションだったようだ。報道によると、両者は4月に広報とマーケティングに関する契約を済ませており、今回もラッシュフォードの意志や行動が速く、広く伝わるように協力したとされる。
ロック・ネイションは、今回の出来事に代表されるような「社会正義」への関心が強いことで知られる。昨年のラグビーワールドカップの後に契約した南アフリカ代表のキャプテン、シヤ・コリシも、新型コロナウイルスのパンデミックが起きている母国で貧しいコミュニティに食料の配布を続けている。
ロック・ネイション・スポーツインターナショナルの代表は、取材に対して次のように発言している。
「私たちは誰に何を言うか、どのように言うかを指示しません。私たちがするのは、それを増幅することだけです」
ロック・ネイションは、社会正義を実現する意志と行動力のあるアスリートをサポートし、その言動を広める役割を担う、これまでにないエージェンシーといえるだろう。
【了】
川内イオ●文 text by Io Kawauchi
1979年生まれ。大学卒業後の2002年、新卒で広告代理店に就職するも9カ月で退職し、2003年よりフリーライターとして活動開始。2006年にバルセロナに移住し、主にスペインサッカーを取材。2010年に帰国後、デジタルサッカー誌、ビジネス誌の編集部を経て現在フリーランスの構成作家、エディター&ライター&イベントコーディネーター。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンターとして活動している。新著『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦』(文藝春秋)が発売中。https://amzn.to/2MKcg7g
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