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【セミナーレポート】MLSシアトル・サウンダーズ10年の歩み ~この10年のビジネスの変遷と次の10年~

2020年02月05日 インタビュー Written by 深谷 友紀

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 ここ数年盛り上がりを見せるアメリカのプロサッカーリーグ、MLS(メジャーリーグサッカー)。その中でも屈指の集客力を誇るシアトル・サウンダーズ。

 今回は、株式会社RIGHT STUFF主催セミナー『MLSシアトル・サウンダーズ10年の歩み ~この10年のビジネスの変遷と次の10年~』にシアトル・サウンダーズのCOO、バート・ウィリー氏を迎え、リーグ加入から10年のビジネスの変遷、過去からの学び、そしてこれからを聞いた。

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シアトル・サウンダーズFCとは
 ワシントン州シアトルをホームタウンとする、MLS(メジャーリーグサッカー)に加盟するプロサッカークラブ。ホームスタジアムはNFLのシアトル・シーホークスと共同でセンチュリーリンク・フィールドを使用している。2009年よりMLSに参戦、2016年、2019年にはMLSカップ(=MLSポストシーズン決勝)優勝。平均観客動員数は4万人を超え、MLS屈指の集客力を誇る。

シアトル・サウンダーズFCのこれまで
 シアトル・サウンダーズは、1996年に開幕したMLSに、2009年に参入し11シーズンを過ごしている。当時のエクスパンション・フィー(加盟料)は約30億円だったが、現在では約250億円まで上昇している。

 MLSのチーム数は、2月29日に開幕する2020シーズンは26チームとなっており、2021シーズン、2022シーズンに2チームずつ増やす予定となっている。

 サウンダーズのブランドはMLSの前身である北米サッカーリーグ(NASL)時代からのもので、以降所属するリーグが変わってもサウンダーズのチーム名は引き継がれてきた。

 ユナイテッドサッカーリーグ(USL/実質的なMLSの下部リーグ)時代、2008年の平均観客動員数は3086人だったが、2019年には約4万人になっている。

 MLS参入時の2009年にNFLのシアトル・シーホークスとパートナーシップを結び、ビジネスオペレーションの指導を受けながらチームを運営。5年が経ち、観客動員数などで共に成功を収める形となったところでパートナーシップを解消し、それぞれ別の道を歩むこととなった。

クラブビジョンの再認識
 シアトル・シーホークスとのパートナーシップを解消後、あらためてクラブとしてが何をしていくか?
・“瞬間”を作っていくこと 
・シアトルの人々の生活を豊かにしていくこと
・サッカーを通じてシアトルの人々を一つにしていくこと

「現在スポーツチームで働いている、あるいはこれから働きたいと考えている皆さんも今一度考えてみていただければと思います」とバート氏は参加者に語りかけた。

 現在100人のスタッフが働いているが、採用の際には、どういった気持ちでクラブにやってくるのかを見ている。特に大切にしているのは、アンビション(野心)、コラボレーション(協働)、イノベーション(革新)の3つだという。

 戦略的な目標としては、もちろん勝つことにこだわっていて、何度でもMLSカップのタイトルを取りたいと考えている。実際ここ5年で3度MLSカップに出場し2度優勝している。

 平均観客動員数は4万人とMLSでもトップクラスとなっているが、ホームスタジアムは6万9000人収容のため、まだまだ伸びしろがある。毎試合満員にするための施策について、さまざまな議論を行っているという。

「ファンのおかげもあり、これまで大きな成功を収めてきましたが、その成功に甘えず、今後も観客を増やし、スタジアムの雰囲気を毎年高めていくという目標を持っています」と語った。

シアトル・サウンダーズの地域貢献
 また、シアトル・サウンダーズは地域に貢献することに価値を置いているという。時には100人のスタッフ全員を休みにしてでも地域のさまざまな活動に参加している。そのような文化をサウンダーズのオーナーも了承しているのだという。

 また、RAVE Foundationという恵まれない地域への支援活動をしている。小さなコートを建設したり、10年間で1000個のボールを贈るなどの活動をしている。

「収益やファンの観戦体験を高めるということも重要なのですが、サウンダーズとしてこのシアトルの街を良いものにしていこうという活動は、私としても誇りに思っていることです」と語った。

シアトル・サウンダーズのオーナーシップ
 アメリカで有名なクイズ番組の司会者でもあるドリュー・キャリー氏は2008年にチームのオーナーグループの一人となった。キャリー氏がオーナーシップに参加する際に2つのことを要求した。

 1つ目は、サウンドウェーブというバンドを作ることだった。彼らは試合やチームのイベント、地域のイベントにも参加している。

 2つ目は、ファンの声が常に届くようなチームでありたいという考えから、4年ごとに実施されるGMの信任投票権をシーズンチケットホルダーに与えることだった。「北米でこのような仕組みを持っているのは自分たちくらいではないかと思う」という。

 また、シーズンチケットホルダーの中から20名のカウンセルグループを作り、バート氏らクラブスタッフと月次のミーティングを行っている。ミーティングでは、ユニフォームやマフラーのデザイン、シーズンチケットを更新してもらうための施策、営業成績やチームの成績などが語られている。

「我々はファンに対して正直であることを大切にしている」という。

 バート氏は、サウンダーズのフロントとして、サステナブルなビジネスをしていく責任があると考えてる。得た収益で良い選手の獲得やファンの観戦体験を高めるなど、クラブ経営に再投資していくことをしっかりと心がけているとのこと。 

「我々が全ての答えを持っているわけではありませんが、みなさんの会社やチームはどこに向かって経営されているでしょうか? 我々はこれまで説明したように、自分たちがどこにフォーカスしていくか定めて前進しています」と語った。

「私は2002年のUSL時代からサウンダーズに関わっていますが、2008年に平均観客動員数3086人だった当時から大きく変わったと感じている」と振り返った。

バート・ウィリー氏が17年間で学んだこと
 バート氏は「2002年からこれまでの17年間、スポーツビジネスで学んだことを共有させていただければと思います」と語り、大事にしているというPから始まる5つの言葉を説明した。

①PEOPLE
 私たちは人(スタッフ)を大切にしている。100人のスタッフがいますが、彼らがどういった目標を持って何に向かっていくべきかをしっかり伝えていきます。

 適正な人が適正なポジションで適正な仕事をしているか、今一度皆さんに考えてもらいたいです。企業文化とはどういうものかも考えてください。会社が従業員を正しい形で扱っているでしょうか? これは我々も常に自問自答していることでもあります。

 私がもしあなたの会社を訪れた時、何をしているのですか? 正しく扱われていますか?と尋ねた時、どのような答えが返ってくるでしょうか?

 スポーツビジネスに関わっていると、常に人の大切さというものを考える必要があります。

②PRIORITIES
 何を優先しているか? 何にフォーカスして取り組んでいるか? また組織はどのように意思決定をしているか?

 全員の意見を取り入れるのは本当に簡単なことではありません。先ほど話しましたファンのカウンセルグループが何を優先しているのかは、私たちが考えることと違っているでしょう。もしかしたら彼らは、安くホットドッグが食べれたり、安くビールが飲めたり、良い選手を獲得してくれと思っているかもしれません。

 私たちは常に前に進むために、組織として3年、5年、7年というタームで考えています。そのような考え方をすることによって、私たちが何を大事にしているのか、何をしていくのか、なぜそれをしているのか、そして誰がその決定をしているのかを考えられるようになります。

 あなたの部下や上司や同僚が何を優先すべきかを知ることによって良いパフォーマンスが出せるのではないかと思います。

③PLAN
 私たちは今、2020年度のビジネスプラン(事業計画)を検討しています。そのプランは何なのか? なぜそのプランを立てるのか?をスタッフ皆で話し合っています。

 3年後、5年後、7年後に向けてサステナブルな組織を維持していくために、プランは大切だと思っています。

④PROCESS
 何を優先すべきかを考え、プランを構築した後は、プロセスに移っていくわけですが、そのあたりは私たちが苦労している部分でもあります。

 正しい人がいれば、正しいことをしていると信じて、何を優先すべきかプランを信じて そのことをブレずに継続していってほしいと思います。

⑤PATIENCE 
 最後に我慢強さが大切です。私たちの業界ではファンを楽しませることが重要ですが、彼らはいろいろなことを要求してきます。その中であっても自分たちが立てたプランであったりプロセスであったり優先すべきことを我慢強く遂行していってほしいと思います。

 私たちサウンダーズでは、3年、5年、7年といったプランに対してオーナーシップも我慢強く遂行していく気持ちでやっています。柔軟性を持つべきではないと言うわけではありませんが、我慢強さを持つことは非常に重要だと思っています。

「スポーツチームで働くということは、エンターテインメントビジネスにいるということなので、フラストレーションを持ったファンもいるかもしれないがリラックスしていこうと、頻繁にスタッフに伝えています」と語りセミナーの最後を締めた。

質疑応答
 質疑応答では、セミナー参加者から、多くの、そして多彩な質問が投げかけられた。バート氏は一つひとつ丁寧に回答された。

Q.シアトル・サウンダーズのビジネス、チームとしてのゴールは何ですか?
A.長くチームを存続させること、リーグ2位の観客動員数をさらに伸ばすこと、グローバルにビジネスを広げていくことを考えています。

Q.地域活動に関して、選手にはどのように浸透させていますか?
A.地域のNPO法人が行っている活動リストを選手に渡し、選手個々人が持っている想いを汲み取った上でマッチングしています。私たちの求めることを理解してくれている素晴らしい選手たちです。

Q.サッカーファン以外のポテンシャルターゲットはどこに定めていますか?
A.リーグとしてデータリサーチをしています。我々はスポーツ好き、サッカー好きの注意をどうやって引くかを考えています。カスタマージャーニーを大切にしています。1試合来てくれた人を、どう4試合来てもらえるようにするか、そしてシーズンチケットホルダーにまでなってもらえるようにするか、生涯のファンにどれだけなってくれるかを考えています。

Q.MLSは以前ヒスパニック系の観客が多い印象でしたが、現在はホワイトアメリカンやイタリア系の観客が多いような印象があります。ファンの属性について教えてください。
A.シアトルはヒスパニック系が少なくアジア系の人種の人が多い傾向にあります。人口の65%が男性です。シーホークスとはファン属性が1%しか重なっていません。

Q.100人のスタッフは多いように思えますが適正なのでしょうか?
A.スタッフ数100人というのはリーグトップ3に入っています。スタッフの80%がチケットおよびスポンサーセールスになります。観客動員がリーグ2位で大きなスタジアムでプレーしていることから、100人という数字は適正なのではと思うとともに、それだけオーナーたちがサッカーに対して本気なのかなと思います。

Q. MLSカップに勝つことが目的とされていますが、サウンダーズが国際的な大会で勝つことについてはどのような価値があると考えていますか?
A. MLSのチームで、CONCACAFチャンピオンズリーグ(北中米カリブ海地区のチャンピオンズリーグ)のタイトルを獲得したチームはまだありません。そこで勝つことによってその先のFIFAクラブワールドカップに出場できるので、MLSのチームがCONCACAFチャンピオンズリーグのタイトルを獲得することはMLSのリーグそのものの価値を高めることができます。サウンダーズでは、2020シーズンのCONCACAFチャンピオンズリーグを一つの目標としています。

Q.シーズンチケットホルダーの人数を教えてください。
A.約3万人ほどです。

Q.シーズンチケットホルダーによるGM信任投票システムはどのようにして施行されたのでしょうか?
A.オーナーの一人がファンに対してアクティブに新しいことに取り組むことを考えていることから始まりました。

Q.カウンセルの20人はどのようにして選ばれるのか?
A.シーズンチケットホルダーの投票によって選ばれます。

Q.NFLのシアトル・シーホークスとホームスタジアムを共有していることのメリットとデメリットについて教えてください。また、将来的には自前のスタジアムを持つ予定はあるのでしょうか?
A.メリットとしては街の中心にある素晴らしいスタジアムということです。また、MLSカップで7万枚近くのチケットを売ることができたのは、ホームが大きなスタジアムであることのメリットです。デメリットとしては、現在リーグ戦の平均観客動員数が約4万人なので、上段のエリアを閉鎖していることがあります。自前のスタジアムについては、現在計画としてはありませんが、将来的に絶対ないとは言い切れません。

Q.大物外国人選手の獲得については考えていますか?
A.ロサンゼルスなどの大都市のチームはスター選手を獲得する必要があると考えますが、シアトル・サウンダーズではそれは最優先事項ではなく、必要ではないと考えています。サウンダーズを勝たせてくれる選手、愛してくれる選手を必要としています。

Q.データアナリティクスはどのような場面で利用されているのですか?
A.ファンビジネスに活用していきたいと考えています。HPの広告をクリックしてくれた人のデータをとってカスタマージャーニーにつなげたいと思っています。データに基づいてシーズンチケットのパッケージを新たにつくっていきます。日々変わる世の中の流れの中で、常にクリエイティブな形でファンの要求に応えていかなければならないと思っています。データを賢くスマートに使いたいと考えています。

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バート・ウィリー<講師プロフィール>
シアトル・サウンダーズFC COO

1996年より元メジャーリーガー、ブレット・バトラー氏の広報担当としてキャリアをスタート。711.net社、Bobby Hillin Racing LLC社にて広報部長を歴任。2001年より7シーズンの間、MLS参入前のシアトル・サンダーズFCのゼネラルマネージャーとしてチームの発展に寄与し、クラブとサポーターのパイプ役として尽力。2008年より同クラブのビジネスディベロップメントおよびビジネスオペレーション・ディレクターとして、チケットセールス、スポンサーシップ、地域貢献、チャリティ、広報、マーケティング等を統括後、2013年にVice President of Business Operation昇進、2014年にCOOに就任。
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<了>

深谷 友紀●文 text by Tomonori Fukatani
1970年生まれ。大学卒業後プラスチック成形メーカーに就職し、2010年よりフリーランスのWebデザイナーに転身、2011年からスポーツライターとしても活動を開始。主にサッカーなど地域スポーツクラブHP製作やサイト更新管理、スポーツ系のWebメディアの運営支援、記事寄稿などを行うなど、自身のスポーツ体験含め、「スポーツを語れるWebデザイナー」として活動中。


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