データで学ぶ、海外プロスポーツ団体のSNS活用術
2016年03月09日 コラム ファンサービス/ファンマネジメント Written by 新川 諒
好きなチーム、選手の最新情報を皆さんはどのように得ているだろうか。最近では、SNSを活用して情報を得るという方も少なくないだろう。
世の中にはさまざまなSNSが存在する中、その主要なツールであるInstagram、Twitter、Facebookにはそれぞれに異なる用途がある。ニュースの種類によって各クラブは使用するツールを使い分け、ファンに向けて情報を発信している。
ⒸRepucom
レピュコムでは欧州トップ25のサッカークラブが2014-15シーズンに発信した1万5千に及ぶSNSでの掲載情報を調べ、それぞれの情報がどんな種類のニュースかを分析した。
「Instagram」では多くの写真を共有できる特性を生かして、トレーニングの様子や舞台裏を伝えるニュースが一番多かった。
「Twitter」はリアルタイムの情報発信に適しており、試合の様子などを随時伝えるのに各クラブは利用している。
そして「Facebook」では"いいね!"などユーザーの反応を直に得ることができるので、イベントの様子や選手との質疑応答セッションのために利用されるのが一番多かった。
メジャーリーグ(米MLB)の現場でもSNSは情報を得るための欠かせないツールだ。筆者の経験上、現場でも追いつかないほど、他球団との移籍やメジャー昇格・マイナー降格などによる選手の動きが球団全体で活発に行われる。それだけに、急に見知らぬ顔がクラブハウスにやって来ては、Twitterの速報でその理由を知ることもあった。レピュコムの調べでも、選手の動向に関するニュースでファンから一番多く反応を得ているのはMLBと出ている。
アメリカンフットボールのシーズンになれば、SNSの最新情報を重宝するのはファンタジーフットボールのファンたちだ。ファンタジーフットボールというのは、実在する選手のスタッツ(成績)を元に対戦相手と競う空想のゲームのことで、その影響もあってかスタッツのニュースでファンから一番多く反応を得ているのはNFL(米アメフトリーグ)と分析された。
世界に目を向けてみると、チームカラーや地域性がSNSにも表れているようだ。得点シーンや月間最優秀賞などの発表をSNSに掲載し、ファンから多くの反応を得ているのはリバプール(イングランド・プレミアリーグ)だ。地元愛が強いチームだけに選手たちの功績に多くのファンが反応し、たたえるのはうなずける。
一方、昨年メガストアの改修工事を終え、マーチャンダイジングをさらに強化したチェルシー(同リーグ)は世界中にファンを抱えるため、グッズ販売をしているクラブの公式サイトへと誘導するのにSNSは有効だ。マーチャンダイジングやデジタル版のマッチデープログラムによって一番ファンから反応を得ていると分析データが出た。
SNSによりこれまで以上にファンに対してさまざまな情報発信が可能となった。チェルシーや日本人選手の本田圭祐を擁するACミラン(セリエA)はSNSを活用して、日本語版の公式Twitterを開設し、日本のファンへも情報発信をしている。チェルシーの日本語版公式Twitterには38,000フォロワー以上、そしてACミランには47,000フォロワー以上が実在する(3月2日時点)。
少子高齢化が進む日本では今後アジア、そして世界にファンを増やしていく必要があるだろう。そのためにはSNSは有効なプラットフォームであるに違いない。
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<レピュコムとは?>
スポーツマーケティングの分野における情報収集や分析、戦略化を実現するスポーツ専門のコンサルティング企業。
マーケティングとスポンサーシップにおける価値を創造するという顧客のニーズに応えることを目的に、メディアのモニターやマーケットリサーチ、さらにはファンの活動のリサーチを実施している。
2004年の設立以来、今や世界20カ国以上に拠点を持ち、1000を超えるトップブランド、代理店、ライツホルダー、メディアにデータ提供するなど、スポーツ業界の分析領域におけるグローバルリーダーというポジションを確立している。
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【了】
新川諒●文 text by Ryo Shinkawa
幼少時代を米国西海岸で10年過ごし、日本の中学・高校を経て、大学から単身で渡米。オハイオ州クリーブランド付近にあるBaldwin-Wallace Universityでスポーツマネージメントを専攻。大学在学中からメジャーリーグ球団でのインターンを経験し、その後日本人選手通訳も担当。4球団で合計7年間、メジャーリーグの世界に身を置く。2015年からは拠点を日本に移し、主に海外スポーツ中継に携わるフリーランスの翻訳家、さらにはフリーライターとしても活動中。
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