NBAに所属するボストン・セルティックスがGリーグのチームを買収
2019年08月03日 コラム チーム/リーグ経営 Written by 川内 イオ

7月25日、アメリカのプロバスケットボールリーグNBAに所属するボストン・セルティックスが、NBAゲータレード・リーグ(Gリーグ)に所属するメイン・レッドクローズ(Maine Red Claws)を買収すると発表した。
その内容を記す前に、Gリーグについて説明しよう。もともとは2001年、NBA選手を育成するためにNBAが後援して設立したもので、当初は「NBAデベロップメント・リーグ」という名称だった。2017年にスポーツ飲料ゲータレードを発売しているペプシコ社がリーグスポンサーに就いたことで、現在の名称になっている。
NBAとGリーグの関係は、アメリカのプロ野球リーグMLBとマイナーリーグの関係と基本的に同じで、Gリーグで若手の有望選手を育成し、NBAに供給することを目的としている。そのため、NBAの各チームがGリーグのチームと提携していて、ドラフトで指名したばかりの新人やNBAのトップチーム登録15名から漏れた若手をGリーグのチームに送り込んで修業させるわけだ。
2005年、田臥勇太が日本人初のDリーグ(当時名称)選手としてアルバカーキ・サンダーバーズでプレーしたのを皮切りに、2014年に富樫勇樹がテキサス・レジェンズ、2018年に渡邊雄太がメンフィス・ハッスルでプレーしている。
もともと、NBAのチームとGリーグのチームは別々に経営されていたが、2006年に初めてロサンゼルス・レイカーズ所有のチームとしてロサンゼルス・ディーフェンダーズが登場すると、NBAの各チームも追随。Gリーグのチームを買収、新設するようになり、現在ではGリーグの27チーム中24チームが、NBAのチームの傘下に加わっている。
ここで冒頭のニュースに戻ると、2009年に設立されたレッドクローズは、当初からセルティックスと提携していたものの、経営形態としては独立して運営されていて、アメリカの銀行TD Bankの元CEOとその息子がオーナーを務めていた。
しかし、地元メディア『ポートランドプレスヘラルド』によると、設立から2シーズンは7万3000人を超える年間観客数を誇ったものの、最近では4万5000人を割り込んでいる。一方、ビジネス面では本拠地があるポートランド市と提携し、使用しているポートランド・エキスポの駐車場収入、広告やスポンサー企業からの収入を手にしており、安定している。Gリーグの選手の基本給は年間3万5000ドルと格安で、負担も小さい。
セルティックスは恐らく、人気低迷しているものの経営的には破たんしていないという点に着目して買収を決めたのだろう。ちなみに、Gリーグの選手がNBAのトップチーム契約を勝ち取ると、最低保証の年棒は約84万ドルに跳ね上がる。
【了】
川内イオ●文 text by Io Kawauchi
1979年生まれ。大学卒業後の2002年、新卒で広告代理店に就職するも9カ月で退職し、2003年よりフリーライターとして活動開始。2006年にバルセロナに移住し、主にスペインサッカーを取材。2010年に帰国後、デジタルサッカー誌、ビジネス誌の編集部を経て現在フリーランスの構成作家、エディター&ライター&イベントコーディネーター。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンターとして活動している。『BREAK!「今」を突き破る仕事論』(双葉社)を発売中。http://u0u0.net/Ct2N
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