元アスリートが語るスポーツの仕事「やる」から「つくる」へ -Vol.16- 元プロ野球選手 生山裕人さん(前編)
2019年07月02日 インタビュー アスリートマネジメント/セカンドキャリア Written by Sports Japan GATHER
SJNでは、アスリートとスポーツを愛する人でつくる新しいコミュニティーメディア「Sports Japan GATHER(ギャザー)」のご協力を得て、記事提供を頂いております。
特集『元アスリートが語るスポーツの仕事 「やる」から「つくる」へ』では、元アスリートの方々にセカンドキャリアについて話を聞いています。
今回は、元プロ野球選手で、現在はプロ野球独立リーグ・四国アイランドリーグplusでキャリアデザインセンター代表を務める生山裕人さんの登場です。
(出典:Sports Japan GATHER『元アスリートが語るスポーツの仕事「やる」から「つくる」へ -Vol.16- 元プロ野球選手 生山裕人さん(前編)』2019年2月22日)
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「自身のアピールポイントをしっかり理解することが大事」
生山裕人(いくやま・ひろと)さん/33歳
プロ野球選手→四国アイランドリーグplusキャリアデザインセンター代表
■大学2年生の時に迎えた“転機”
「プロ野球選手なんて目指していなかったし、目指せるものだとも思いませんでしたね」
そう話してくれたのは、元プロ野球選手として千葉ロッテマリーンズに所属していた生山裕人さん。彼の経歴は、特異なものだった。
野球を始めたのは小学生で、幼なじみがきっかけ。中学校、高校でも野球部に所属し、汗を流していたが結果は出ず。1浪し、近畿大学の文芸学部に進学後、硬式野球部に入ろうと考えていたが、野球の強豪校であったため、実績がない生山さんが入部することはかなわなかった。
しかし、野球自体はとても好きだったので、二部の準硬式野球部に入部。
「高校は進学校で、野球よりも勉強でした。大学に入学することで時間もでき、プレーする時間が増え、それからどんどんのめり込んでいきましたね。週3回しか練習がない準硬式野球部だったので、八尾ベースボールクラブに入り、掛け持ちして半年間ほど行っていました。ただ、迷惑が掛かると思い準硬式野球部を辞めて、クラブチーム一本に絞って野球をすることにしました」
と生山さん。身長が高く、足も速かった、加えて肩も強かったため“どこまでやれるんだろう?”という思いが強くなり、大学2年生の時に、四国アイランドリーグ(現・四国アイランドリーグplus)のトライアウトを受けに行った。
「最初は、“諦めるために上を目指そう”というところから始まりました。何の実績もありませんでしたし、プロを目指すというゴールを目標にしない限りは、だらだら好きな野球をやり続けてしまいそうだったので。ただ、自分でもリミットを決めていました。当時21歳だったので、4年間受からなかったら諦めようと思っていました。1年目は下見程度という、軽い気持ちで考えていたのですが、まさかの『合格』でした。自分でも“ホンマかい?”と本当に驚きましたね(笑)」
2007年に大学を休学し、同リーグの香川オリーブガイナーズに入団。“目指せるものではない”と、考えていた幼少時代のイメージを一夜にして変えてみせたのだ。
しかし、現実は甘くなかった。入団した選手たちは名門校出身者が多く、実力者だらけ。生山さんは、野球の技術というよりも身体能力の部分で合格したので、レベルの違いに衝撃を受けた。
そして、練習に必死についていき、なんとか結果を残そうと頑張っていたキャンプ中に、肘の靭帯を部分断裂するという重症を負い、戦線離脱してしまった。
「年間の契約ではないので、とても厳しかったですね。何もしていないのにクビになってしまっては応援してくれている人たちに申し訳ない。だから無理をしながら、リーグ後半に復帰し、試合に出場。そして、レギュラーの座を獲得することができました」
1年目は、60試合に出場。打率.271、盗塁7という成績を残した。
「とにかく足を生かせるように、ドラッグバント(※打者が普通の構えから打つ瞬間にバントにかえ、内野手の前に打球を転がすプレー)をかなり練習して、試合でも使っていましたね。一塁まで到達するタイムをとにかく速くすることを考えていました。あとは、守備のポジションまでを全力で走っていました。一塁ベンチから、守備位置までの数十mを120%の力で。“あいつ足が速いな”と、いかにアピールできるのかを必死で行っていました」
自身の強みを必死に伝えていた結果スカウトの目に止まり、1年目の契約更改のときに『興味を持っているNPBの球団がある』と伝えられた。
まさに、まさかの一言。生山さんはプロになることも信じていなかった中で、日本で1番のリーグであり、夢のまた夢であったNPBを“目指してもいい場所”だと、初めて思えた。
■育成選手として千葉ロッテマリーンズに入団
しかし、気合を入れた2年目もまたけがに泣かされてしまうことに。
1年目のけがが悪化してしまい、トミージョン手術を決断。リハビリを兼ね前半戦は全て欠場。後半戦、48試合に出場するものの、レギュラーシーズンの打率は.221と振るわなかったが、チャンピオンシップ(※前期、後期で優勝したチームが対戦)、グランドチャンピオンシップ(※BCリーグの優勝チームと対戦し、独立リーグの日本一を決める大会)で、2番レギュラーとして出場。自慢の足を生かすことはもちろん、バッティングも好調で、チームに大きく貢献。その活躍を見ていた千葉ロッテマリーンズから、育成ドラフト4巡目で指名された。
「もちろんうれしかったですが、もう訳が分かりませんよ。本当にできるのかということを自問自答しました。リーグでも成績は出していないほうだったので“やってやる!”というよりは、”大丈夫かな?”という不安の気持ちのほうが大きかったです」
スカウトの人は、どんな試合でも全力でプレーしている生山さんの姿を見て指名したという。アピールポイントが、きちんと評価された結果となった。
2009年から千葉ロッテマリーンズの一員になり、レベルの違いを感じながらも、試行錯誤を繰り返し、徐々に実力をつけていった。1年目は、2軍で2試合の出場にとどまったが、年々出場機会を増やし、2012年は87試合に出場、四国アイランドリーグでも打てなかったホームランを2本も打てた。しかし、1軍でプレーすることなく2012年10月7日付けで戦力外通告。その時、27歳だった。
「4年間、いい思い出より、苦しい思い出のほうが多かったですね。でも、野球のレベルも上がっていたし、どこかの球団で続けたいなと希望していました。でも、育成選手を抜けることができず、年齢も20代後半、クビといわれた中で、1軍で活躍できる可能性はあるのかなと……。俯瞰して自分を見たときに、きっと無理だろうと思いましたね」
野球は大好きだった。しかし、このまま続けていくことのリスクを考え、ユニフォームを脱ぐ決断をした。
(後編へ続く)⇒https://sjn.link/news/detail/type/report/id/298
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[PROFILE]
生山裕人(いくやま・ひろと)
1985年生まれ、大阪府出身。大阪府立天王寺高校卒業後、1浪し、近畿大学文芸学部芸術学科演劇芸能専攻演技コースに進学。二部の準硬式野球部、八尾ベースボールクラブを経て、21歳の時に独立リーグの四国アイランドリーグ(現・四国アイランドリーグplus)のテストに合格。大学を休学して香川オリーブガイナーズへ入団。2年の在籍期間を経て、2008年の育成ドラフト4巡目指名で千葉ロッテマリーンズへ入団。4年間在籍したが、支配下登録されることはなく、2012年のシーズン終了後に戦力外通告を受ける。ウェディングプランナーを経て、現在は四国アイランドリーグplusキャリアデザインセンターの代表として従事。
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(※データは2019年2月22日時点)
【了】
取材・文=太田弘樹
取材協力=スポーツ庁委託事業「スポーツキャリアサポート戦略における{アスリートと企業等とのマッチング支援}」
記事提供:Sport Japan GATHER
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