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元アスリートが語るスポーツの仕事「やる」から「つくる」へ-Vol.15-元プロ野球選手 江草仁貴さん(後編)

2019年05月14日 インタビュー Written by Sports Japan GATHER

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 SJNでは、アスリートとスポーツを愛する人でつくる新しいコミュニティーメディア「Sports Japan GATHER(ギャザー)」のご協力を得て、記事提供を頂いております。

 特集『元アスリートが語るスポーツの仕事 「やる」から「つくる」へ』では、元アスリートの方々にセカンドキャリアについて話を聞いています。

 今回は、元プロ野球選手で、現在はデイサービス事業を行う株式会社キアンで代表取締役を務める江草仁貴さんの登場です。

前編はこちら⇒https://sjn.link/news/detail/type/report/id/287

(出典:Sports Japan GATHER『元アスリートが語るスポーツの仕事「やる」から「つくる」へ-Vol.15-元プロ野球選手 江草仁貴さん(後編)』2019年2月18日)

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「競技以外に費やす時間は、将来を見据えて使ってほしい」

江草仁貴(えぐさ・ひろたか)さん/38歳
プロ野球選手→株式会社キアン代表取締役

■高齢者が楽しく継続できる体幹トレーニングの導入
 阪神タイガースや広島東洋カープで中継ぎ左腕として活躍し、2017シーズンをもって15年のプロキャリアに終止符を打った江草仁貴さん。同年7月にはリハビリ型デイサービス事業を運営するため会社を立ち上げ、経営者として第2の人生をスタートさせた。

 その名の通りリハビリに特化した介護施設のため、1日に午前の部・午後の部に分け、それぞれ機能訓練を中心とした約3時間のプログラムを組んでいる。具体的にどういったリハビリを行っているのだろうか。

「主なリハビリ型デイサービスは、マシンを使ったトレーニングを導入していますが、自社にはそういった機械は置いていません。私は、現役時代にさまざまなトレーニングをこなしてきましたが、そういった経験を元に高齢者の方に適切なメニューを考えていくという結論に至りました。

 なぜかというと、マシンだとトレーニングに変化をつけられないので、利用者さんが途中で飽きてしまいます。確かに良いマシンを導入している施設は人気が高いですが、飽きてしまいすぐにやめてしまう人も多いんです。だから自社では、インナーマッスルを鍛えるチューブ運動やボールを使ったメニューを取り入れて、利用者さんに合った柔軟なトレーニングを行っています」

 ただ、マシンを使用しない体幹トレーニングだからこそ感じる課題もある。

「やはりトレーニング機器だと、どれぐらい筋力が上がったのかが数値化されるので、目に見えて分かりやすいんです。それに対して体幹トレーニングは数字として表れない分、どれぐらい効果が出ているのか実感しにくい部分があります。だから時間はかかりますが、利用者さんには何度も通っていただかないといけない。そのため、途中で飽きることのないよう豊富なバリエーションのあるトレーニングメニューを用意しています」

 実際にやめる人は少ないと、江草さん。取材に訪れた際も、利用者のにぎやかな笑い声とおしゃべりが絶えることはなかった。まるで、学校の休み時間に遊ぶ子どもたちのように、和気あいあいとした楽しい雰囲気の中でトレーニングをこなしていたのだ。

 子どもと離れて暮らす割合が多く、周りに頼れる人が少ない高齢者にとって、こういったデイサービスの中で生まれる交友関係は、間違いなく生きていく上でのモチベーションにつながっていく。実際に江草さんは、利用者である93歳のおばあちゃんから感謝の手紙をもらった。

「その方は一人暮らしで、“いつ死ぬのかな”という思いの中で日々を過ごしていたらしいのですが、通うようになってから、気持ちが変わったらしいんです。

 “今までは生きる目的がなかったけど、この施設に行くようになって、100歳まで生きたいと思うようになりました”

 この手紙を読んだときは、もう本当にうれしくて、この仕事を始めてよかったなって心の底から思いましたね」

 まだ設立後2年も経過していないキアンだが、確実にファンを増やし、リハビリ型デイサービスとしての地位を着実に築いている。

■介護事業の傍ら大学野球の指導者も
 現在は、介護事業に力を注いでいる江草さんだが、実は仕事として野球にも携わっている。2018年3月から、阪神大学野球連盟2部に所属する大阪電気通信大学の投手コーチも務めているのだ。

 同年2月に、元プロ野球関係者が学生野球の指導者になるために必要な『学生野球資格回復』の適正認定者となったため、数々のオファーの中から、兵庫県にある自宅に近い同校を選択。その野球部が強化指定クラブに認定されたこともあり、2部から1部昇格に導こうという学校の想いを聞き、一役買った。しかし、弱小校ゆえ、選手たちの野球に対する意識の持ち方に、江草さんは大きなギャップを感じたという。

「大阪電気通信大学には、“プロの世界でプレーしたい”あるいは“社会人でも野球を続けたい”と考える選手はいないんです。どちらかというと“楽しみたい”という気持ちでやっているんですよね。だから、厳しい練習メニューを設定すると、みんな部活を辞めちゃうんですよ(笑)。

 でも僕としては、コーチとして呼ばれたからには試合で勝ちたいじゃないですか。野球を嫌いにならずに、なおかつ実力を向上させるにはどうすればいのか。考え続けた結果、たどり着いたのが“遊びの要素を取り入れた練習”です。

 例えば、ランニングコースの中に要所でクイズを用意して、クリアできたら次のステージに進める。そういう遊びの要素を入れながら、厳しいメニューでも楽しくできるように工夫を凝らしていきました。そうすることによって、“人生の中で一番野球に打ち込めるようになりました”という声も聞けるようになりましたね」

 介護事業でも同様に、野球の指導でも“飽きさせない”で継続させる工夫を実践している。

■「周りの目は気にするな」現役時代から”次”を意識した行動を

 経営者として、事業を行うようになった江草さん。今後、元アスリートを従業員として、受け入れる体制を整えていきたいという。

「野球にかかわらず、各競技のアスリートはプロになるために相当練習してきていますし、自分で自分を奮い立たせる力が備わっています。少なくとも、誰かに言われないと行動に移せないような人たちではないと思っています。競技以外の世界でも、自身の成功体験をもとに一生懸命仕事に打ち込むことができるはずです」

 そういった人材の採用事例をつくっていくことにより、スポーツ界におけるセカンドキャリアの選択肢を増やしていこうと考える。だからこそ、現役の選手たちにはしっかりと考えてほしいと願っている。

「どんなトップアスリートでも、いずれ選手としてのキャリアを終えるときが訪れます。だったら、引退後を見据えてあらかじめ動いていた方が、しっかりと事前準備をすることができる。それに動くのが早ければ早いほど、自分のやりたいことが見つかる確率が高まりますしね。

 ただ、周りの選手や関係者から“セカンドキャリアのことを考えるんだったら、もっと練習しろよ”って言われることもあると思うんです。でも、よくよく考えたら、プロ野球選手だったら野球を頑張るのは当たり前ですし、その中で『24時間365日野球をしますか?』って言われたら、絶対にできないじゃないですか。

 選手によっては、練習以外の時間を趣味に使う人だっているわけです。だったら、その時間を次のキャリアについて考えることに費やしても、誰も文句はいえません。周りの目を考えたらやりにくいとは思いますが、シーズンオフの期間中だけでいいので、ぜひいろんなことに興味を持って行動に移してほしいですね」

 以前は、現役中は競技に集中し、引退後に第2の人生を組み立てていく。そんな時代だったが、現代のスポーツ界では引退後を含む人生設計を現役のころから考える『デュアルキャリア』が主流となりつつある。従来の固定概念に縛られることなく、江草さんのように将来を見据えた行動を、現役中から実践してみてはいかがだろうか。

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[PROFILE]
江草仁貴(えぐさ・ひろたか)

1980年生まれ、広島県出身。大学卒業後、ドラフト自由獲得枠で阪神タイガースに入団し、3年目から強力リリーフとして1軍に定着。145キロの直球と、フォーク・ツーシームという2種類の落ちるボールを駆使してロングリリーフもこなし、シーズン50試合以上の登板をこなせる貴重な中継ぎ左腕として活躍。その後、埼玉西武ライオンズへの移籍を経て、2012年に広島東洋カープへ移籍。2017年、現役引退。現在は、株式会社キアン代表取締役としてリハビリ型デイサービス事業を行う。
HP:株式会社キアン
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(※データは2019年2月18日時点)

【了】

取材・文=佐藤主祥
取材協力=スポーツ庁委託事業「スポーツキャリアサポート戦略における{アスリートと企業等とのマッチング支援}」

記事提供:Sport Japan GATHER

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