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アリーナに靴磨きスタンドをオープン! ネッツとザッポスのユニークな取り組み

2015年12月23日 コラム Written by 川内 イオ

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 日本にも数多くのスタジアムがあるが、海外に比べて訪れた観客が体験できるサービスには、それほどバリエーションがあるとは言えない。試合をライブで観戦する以外には、スタジアムグルメを味わう、併設されているショップやミュージアムを楽しむ、それぐらいではないだろうか? 
 よくよく考えると、それではもったいない。試合の前後に何か観客が楽しめるようなサービスを提供できたら、代わり映えのしないスタジアムでの体験を差別化できるだろう。

 特にお金を掛けたサービスである必要はない。例えば、NBA(バスケットボール)のブルックリン・ネッツはスポンサー契約を結んだ靴のオンラインショップ「ザッポス」と組んで、体験者が間違いなく喜び、拡散性もあるユニークなサービスを始めた。この12月から、ネッツのホームアリーナ「バークレイズ・センター」に、無料の靴磨きスタンドをオープンしたのである。

 ザッポスの資金によって作られたこのスタンドには、革靴もスニーカーも扱える靴磨きのプロフェッショナルが常駐するが、それだけではない。順番を待つ間もくつろげるように“セルフィー・ソファ”と、ザッポスのサイトで新作の靴をチェックできるディスプレーを用意。天井にはカメラが設置されていて、ソファに座っている自分をセルフィーできるようになっている。もちろん、撮った写真はメールで自分宛てに送信可能で、その写真に定められたハッシュタグを入れてTwitterやFacebookに投稿すると、抽選で席のアップグレード、VIPラウンジへのアクセス権などが当たる仕組みだ。

 スタジアムには、かなり余裕を持って到着し、ホットドッグを頬張ったり、ビールやジュースを飲みながら、試合開始まで暇を持て余している観客も多い。自分もそのタイプだが、もしこの靴磨きスタンドがあったら、ぜひとも利用したい。そして、ソファで写真を撮って、SNSに投稿するだろう。お得な特典が当たればもちろんうれしいが、それが目当てというよりは、「アリーナで靴を磨いてもらう」という珍しい体験を友人たちに自慢したいからだ。

 ネッツは、エンターテインメント性のあるサービスを提供することで観客の満足度を高めるだけでなく、チームのPRにもつなげている。
ザッポスは、本業に即したユニークな仕掛けを作ることで、あまり資金を掛けずに拡散性の高いプロモーションができる。
 観客は、靴がきれいになってうれしいし、特典に当選すればさらに喜ばしい。

 三者が満足するこの取り組みは、今まで日本ではあまり注目されてこなかったスタジアム体験を向上させ、リピーターを生む方策として、大いに参考になるだろう。

【了】

川内イオ●文 text by Io Kawauchi
1979年生まれ。大学卒業後の2002年、新卒で広告代理店に就職するも9ヶ月で退職し、2003年よりフリーライターとして活動開始。2006年にバルセロナに移住し、主にスペインサッカーを取材。2010年に帰国後、デジタルサッカー誌、ビジネス誌の編集部を経て現在フリーランスの構成作家、エディター&ライター&イベントコーディネーター。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンターとして活動している。


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