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「使用済みソックス」は売れるのか? MLBが今シーズンからオークション形式で販売

2017年07月14日 コラム Written by 谷口 輝世子

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 他人の使用済み靴下に関心を持つことになるとは、思ってもみなかった。
 メジャーリーグ(MLB)では、選手の試合着用ユニフォームをオークション方式で販売している。どの選手が、どの試合で使用したかを証明する認証マーク入りだ。憧れの選手が試合で使ったユニフォームは、ファンにとってはお宝。メジャーリーグが、選手使用のボールやバットに認証マークを入れて販売するようになったのは10年以上前から。今年はとうとう選手の使用済みソックスもオークションにかけるという。
 メジャーリーグでは通常のユニフォームの他に、特定の日だけに着用するスペシャルバージョンがある。今シーズンは、祝日である戦没将兵追悼記念日(メモリアルデー)と独立記念日、母の日、父の日、オールスターの本塁打競争、オールスター戦といった特別ユニフォームを用意。これらのスペシャルバージョンのユニフォームも、試合で選手が着たものをオークションにかける。スペシャルバージョンのオークション売り上げは、祝日、母の日、父の日に関連する団体などに寄付。独立記念日のユニフォームの売り上げは退役軍人の支援に充てられる。
 今年の特別ユニフォームの「目玉」は選手が着用するソックスだ。その背景には、メジャーリーグ機構が今シーズン、ソックス会社のスタンス(STANCE)と契約したことにある。球団のロゴやカラーをアレンジし、遊び心を取り入れたデザインが特徴。NBA(米プロバスケットボールリーグ)はメジャーリーグに先駆けて2015年にスタンスと契約しており、選手の足下のおしゃれを演出してきた。NBA、メジャーリーグとも、チームカラーを使い、ロゴの入ったユニークなソックスを一般向けに販売している。
 特別なソックスを作った理由には、選手のユニフォームの着こなしにも関係がありそうだ。1990年代後半から最近までは、ユニフォームのズボンが足首まで隠れるような着こなしをする選手が多かった。ズボンの裾をスパイクの後ろの金具に引っかけている選手もいた。しかし、ここ数年はマイアミ・マーリンズのイチロー選手のようにユニフォームのズボンを膝近くまで上げて、ソックスを見せる着こなしをする選手が増えてきている。ソックスを見せる着こなしだからこそ、おしゃれなデザイン、ユニークな柄をアピールできる。
 さて、選手が着用した使用済みソックスはどのようにオークションにかけられるのか。
 私は7月4日の独立記念日にデトロイト・タイガースの本拠地で行われた対サンフランシスコ・ジャイアンツ戦を取材した。この日のソックスは、両チームの選手とも、片方が赤と白のストライプ、もう片方がネイビーに星が入ったもの。メジャーリーグ全球団共通だ。
 デトロイトで選手の使用ユニフォームを収集した係員は「ユニフォームと帽子、ソックスを選手から回収する。ソックスだけは洗濯してからオークションにかける。選手から脱いだソックスを預かり、まず、どの選手が履いていたのかが分かるように印をつける。そして、洗濯をしてから、あらためて認証マークをつける。認証の印をつけてから、洗濯すると印が取れてしまうので」と説明してくれた。
 すでに、父の日の水色ソックスと母の日のピンク色のソックスは「使用済み」のものがオークションにかけられていた。使用済みだが、洗濯済み。ユニフォームは高額な値段がつくことが多いが、靴下ならば手が出やすい価格に落ち着きそうだ。デトロイト・タイガースのジャスティン・バーランダー選手が父の日に着用した水色のソックスの入札額は、11ドルだった。
 特定の日に、選手がいつもと違ったユニフォームに身を包んでプレーする。それを見るのは楽しい。試合着用ユニフォームは額にでも入れて飾りたいが、ユニークな柄のソックスを落札したなら、それを履いて外出し、誰かに見てもらいたいようにも思う。
 果たして使用済みソックスはこれからオークションの人気アイテムに育っていくかのだろうか。

(※写真:独立記念日に先発したデトロイト・タイガースのマイケル・フルマー選手)

【了】

谷口輝世子●文 text by Kiyoko Taniguchi
1994年にデイリースポーツに入社し、日本のプロ野球を担当。1998年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のスポーツ事情をお伝えします。著書『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店、『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)、分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)。


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