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【セミナーレポート】企業とスポーツの交流会 ~2020に向けて企業とスポーツの関り方を考える会~

2017年07月09日 インタビュー Written by 深谷 友紀

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 2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機にスポーツの支援をしてみたい、スポーツに関わってみたいという企業は多いのではないか。しかし、どのように関わったらよいのか、またどうしたら関われるのかの情報は少ない。そこで今回、企業とスポーツの関わり方の事例を紹介しつつ、スポーツに興味を持っている企業とスポーツ関連企業・団体との交流会イベント「企業とスポーツの交流会 ~2020に向けて企業とスポーツの関り方を考える会~」が、5月19日に開催された。

 企業がスポーツと関わることのメリットにはどんなものがあるのか。スポーツは企業に対してどのような価値を提供できるのか。2020年とその後に向けて、企業とスポーツの距離をお互いに縮めてより幸せな関係を構築できるヒントをお届けする。

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■オープニング
 オープニングでは、本イベントの主催者である株式会社RIGHT STUFF取締役・河島徳基氏の掛け声の下、参加者同士の名刺交換などの懇親会が静かに始められた。参加者は、初めは恐る恐るだったものの、時間が経つにつれて活発な交流が行われ、第一部の渡邉和史氏(日本コカ・コーラ株式会社)の講義がなかなか始められないほどの熱気に包まれていった。

 河島氏の進行の下、ようやく会場が落ち着いた後、今回のイベントの会場「SPACES 大手町ビル」を運営する日本リージャス株式会社の上保政幸氏より冒頭のあいさつがあった。日本リージャスは、1998年に日本で初めて「フレキシブル・ワーキング」を提唱。2017年4月現在で全国111拠点にレンタルオフィス事業を展開し、「働き方改革」の新たなソリューションを提示している。

■第一部 コカ・コーラが考えるスポーツの価値
 第一部は、日本コカ・コーラ渡邉和史氏より、『企業がどのようにスポーツを使うのか?』について語った。

 渡邉氏はこれまで、広告代理店(博報堂)、ライツホルダー(FIFA)、スポンサー(日本コカ・コーラ)と、スポーツマーケティングにおける全アングルからスポーツに携わってきた。

●スポンサーシップは“目的”が大事
 80年代後半から90年前半日本企業が海外へ進出の際に、インパクトのある名前の露出・売り方が必要となったため、サッカークラブのユニフォームの胸スポンサーになることがはやった。なぜかというと、その企業ブランドを露出するにはこの手法が最も効果的だったからだ。しかしこの目的を達成した今、このブランディング手法は現在では主流ではないという。

 渡邉氏は「企業によるスポーツへのスポンサーシップは“目的”が大事です」と繰り返し語った。

 コカ・コーラ社がスポーツに投資する目的は、『コカ・コーラのブランドを広げ、世界中の人々にコーラを飲んでもらうため』、『全てはコカ・コーラのビジネスのため』だと渡邉氏は言う。

 オリンピックのスポンサー一覧ではABC順にスポンサー企業のロゴが並んでいるが、コカ・コーラ社は最初にオリンピックのスポンサーになった企業のため(1928年から)、国際オリンピック委員会(IOC)は敬意を表して1番目にコカ・コーラ社のロゴを表示している。

「残念ながら日本のスポンサー企業の多くは、目的がないままオリンピックのスポンサーtなっている印象です。消費者とのコミュニケーションにおいても、何のためにスポンサードしているのか分からない中途半端なものしかできていません。オリンピックを使って自分の会社をどうするのか?、どう変えるのか?、という明確な指標を持つことが必要です」と渡邉氏は語った。

●スポーツマーケティングは“共感”が大事
 マーケティングでは、人々から“共感”を得ることが大事だ。そのためにはスポーツが一番共感を生みやすいとコカ・コーラ社では考えられている。

 コカ・コーラ社には、「1:5の理念」があるという。例えば、1億円でスポンサー契約をしたら、5億円を使ってその権利を使ってアクティベーションを行っている。それは、『買ったコンテンツをとことん使う』ためだ。

 企業が陥りやすい失敗例として、予算が5000万円にもかかわらず、アスリートとの契約に5000万円を使ってしまうことが挙げられるという。

「5000万円の予算なら、1000万円の契約を結びます。残りの4000万円でアクティベーションに注力する方が正しいマーケティングです。身の丈に合った予算の使い方が大事です」と渡邉氏は言う。 

 コカ・コーラ社では、代理店を通さずアスリートと直接取り引きをしている。これは代理店に中間マージンを取られず、かつ選手との意思疎通がしやすいことが理由とのこと。

 コカ・コーラブランドのメインターゲットはティーンエイジャーであるため、ティーンエイジャーに共感しやすい選手を選んでスポンサードしているという。

 ただし、コカ・コーラ社は全国展開しているため、例えば北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手は、北海道では喜ばれるが、その他の地域では喜ばれない場合もあるので、コカ・コーラ社ではスポンサードしない。ニュートラルで、日本全国で応援してもらえるアスリートを選んでいる。

「“目的”と“共感”、この2つが合わさるとスポーツマーケティングが正しい形で発揮できると思っています」と渡邉氏は語った。

●参加者からの質問
 渡邉氏の話の後、参加者から以下のような質問があった。

Q.どのようにしてスポンサードした効果を判断しているのですか?

「飲料は気温が1℃上がると売れるなどの外的要因が強いので、売り上げだけでは一概に判断できません。コカ・コーラ社では、契約選手と製品の結び付きを調査して、『〇〇選手といえばコカ・コーラ』とつながるかを算出しています」

Q.それぞれの企業がそれぞれの目的でスポンサードすればよいということですね?

「従来のボランティア・マインドであったり、『買ってからどうしよう』と考えるのではなく、各社多様な取り組みの下で、『これを達成するためにこれが必要』と考えることが大事です」

 渡邉氏は最後に、「これからのスポーツマーケティングは、『競技場のどの場所に看板を出します』などの従来の提案では企業は見向きもしてくれません。多様な企業のニーズに合わせ『あなたの課題を一緒に解決します』というやり方が増えていきます」と語り講義を締めた。

■第二部 ブラインドサッカーが考える企業とスポーツの幸せな関係
 第二部は、『スポーツ側からどういう風にアプローチするか?』というテーマで、日本ブラインドサッカー協会(JBFA)の松崎英吾氏が語った。

●障がい者スポーツと日本ブラインドサッカー協会について
 日本では、健常者は障がい者に対して弱いものなどといった偏見を持っている。また日本の政策においても、歴史的に、面倒、コストが掛かる、という扱いで、障がい者施設は都心にはなく、健常者から分けて管理されていた。健常者と障がい者が幼少のころから一緒に育っていないということは、日本の社会制度の問題。“共生社会”は概念として分かっていても行動に起こせないことが、今の障がい者を取り巻く日本の社会の背景にあるだろう。

「障がい者スポーツはこのような社会の状況を変えていくのに役に立つのではないかというところがわれわれの活動の根底にあります」松崎氏は語った。

 障がい者スポーツは国から支援を受けている。また、企業からするとスポンサードする目的が見いだせず、協会としてなかなか自立できないでいた。

 これまで障がい者との出会いを笑顔ですることは難しかったが、スポーツは笑顔で出会っていい場所だと松崎氏は考えた。そこで、障がい者と健常者が笑顔で出会えるブラインドサッカー体験会という場所を提供して、健常者のマインドセットを変えていこうとしている。

「私たちのビジョンは、ブラインドサッカーを通じて障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会の実現です」と松崎氏は語った。

●日本ブラインドサッカー協会の特徴
 障がい者スポーツ競技団体は約70あるが、3年ぐらい前までは有給の専従スタッフが働いている団体はJBFAだけだった。

「この10年、さまざまなチャレンジをしてきたのがJBFAの特徴です」と松崎氏は語った。

 代表チーム強化費の財源として、国からの助成金に依存せずに法人の協賛金や企業研修などの事業収入を得ている。企業研修は2016年度においては年間70件を行っており、『混ざり合う社会のためのプログラム』を提供するなど、パートナー起業へのサービス展開も行っている。

 ブラインドサッカー単独種目の国際公式試合として、2014年に世界選手権、2015年にアジア選手権(リオ・パラリンピックアジア最終予選)を代々木競技場で、有料試合として行った。初めての有料化の試みで悩んだ面はあったが、障がい者割引は行わずに健常者と同一の料金だったとのこと。その分、会場では障がいの有無にかかわらず誰もが楽しめるように、視覚障がい者だけでなく車いすユーザーや聴覚障がい者などへのサービス・ツールを充実させた。

●企業とのパートナーシップ
 松崎氏は、ブラインドサッカー普及活動の初期に、とある学校の先生から「ブラインドサッカーを体験しても教育に何の意味もない」と言われたことに大きな衝撃を受けたという。そこで松崎氏は活動を見直し、「子どもたちの学びや価値、先生のニーズとは何だろうか?」と掘り下げていき、教育現場の問題・課題に即したプログラムに改善した。すなわち、ブラインドサッカーを体験することにより子どもたちの教育の課題解決にこう役に立つと言語化してアピールすることにした。そのことにより先生からの反応が良くなったという。

「価値は言語化して創るものと学びました」と松崎氏は語った。 

 当初は「困っているので助けてください」とアピールしても“20万円”の日本代表スポンサーすら企業に見向きもされなかったが、教育現場と同様、先に企業のメリットをアピールすることに切り替えてから潮目が変わったという。

「ブラインドサッカーは、ビジョン・理念を売っている。これは他のスポーツでは売りにくい。コスト主義から価値共創へ、支援先からパートナーへ、メディアカバレッジはKPIの一つという認識を合わせることが大切」と松崎氏は語った。

●理念訴求とスポーツビジネスの狭間

 JBFAが掲げる理念「混ざり合う社会」と、スポンサーの競合排除を行うことには矛盾が生じてしまう可能性があるが、それでも松崎氏は、スポンサーへの配慮のため、商標・肖像権・放映権ライツ管理をしっかり行ってきたという。ただし、スポンサー競合他社でも、企業研修は分け隔てなく行っていくことで理念訴求を担保してきたという。

「スポーツをするだけでは価値化されないと思います。具体的に価値を言語化し、サービス化して競技に結び付けることを意識してやってきました」と松崎氏は語った。

●参加者からの質問

Q.企業研修はいくらでやっているのですか?

「廉価版パッケージで90分15万円~40万円になります」

Q.試合は会場が静かなので、見るスポーツとしての難しさがありますが、この点についてどうお考えなのでしょうか?

「音のシャットダウンの技術など、現在いろいろなチャレンジをしていこうと考えています」

Q.代表選手の雇用事情について教えてください。

「障がい者の雇用状況は需要過多になってきていますが、現役を終えた後のキャリアについては考えられていません。JBFAとしても課題となっています」

 松崎氏の講義の後、本交流会共同主催者であるDreamers Japan株式会社の本田康弘氏のあいさつがあった。本田氏は「渡邉氏、松崎氏お二人の話を聞いて、スポーツはなぜ尊いのかが問われる時代が来たのかなと思いました。これから私は、企業側にもスポーツ団体側にも、スポーツを活用することによって社会はこうなるという発信をしてまいります」と語った。

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 第二部の後、懇親会が行われ、講師の渡邉氏、松崎氏と参加者の交流が図られるなど活況の中、本イベントは幕を閉じた。

 アスリートやアスリートを支援している企業、各スポーツ団体など、さまざまな参加者の交流が行われていた。今回の交流をきっかけにそれぞれが大きな一歩を踏み出せることを願う。

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<講師プロフィール>
渡邉 和史(わたなべ・かずふみ)
日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部IMCマーケティングアセッツ部長

アメリカで生まれ育ち、大学は日本の上智大学を卒業後、株式会社博報堂に入社。トヨタ自動車株式会社の営業担当として、リベルタドーレス杯の運営や同社キャンペーンなどを担う。2000年にFIFA  Marketing  AGに転職。2002年FIFAワールドカップ・日韓大会を経験。2004年に株式会社博報堂DYメディアパートナーズへの転職を経て、2011年に日本コカ・コーラ株式会社に入社。アクエリアスブランドのスポーツマーケティングや2014年FIFAワールドカップ・ブラジル大会のキャンペーンを手掛け、現在は日本コカ・コーラのスポーツ/エンターテインメントの交渉窓口、コミュニケーションプロデュースを遂行中。またIOC(国際オリンピック委員会)との共同プロジェクト、オリンピックムーブスにもメインで関わる。

松崎 英吾(まつざき・えいご)
特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会 事務局長
IBSA(国際視覚障がい者スポーツ連盟) フットボール委員会委員
一般社団法人日本障がい者サッカー連盟 理事

国際基督教大学卒。1979年生まれ/2児の父。学生時代に、偶然に出会ったブラインドサッカーに衝撃を受け、深く関わるようになる。大学卒業後は、株式会社ダイヤモンド社に勤務。一般企業での業務の傍らブラインドサッカーの手伝いを続けていたが、「ブラインドサッカーを通じて社会を変えたい」との想いで、日本視覚障害者サッカー協会(現・日本ブラインドサッカー協会)の事務局長に就任。「ブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること」をビジョンに掲げる。スポーツに関わる障がい者が社会で力を発揮できていない現状に疑問を抱き、障がい者雇用についても啓発を続ける。サステナビリティをもった障がい者スポーツ組織の経営を目指し、事業型非営利スポーツ組織を目指す。経済産業省・スポーツ庁「スポーツ未来開拓会議」委員。ソーシャルマネジメント合同会社共同代表
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【了】
深谷 友紀●文 text by Tomonori Fukatani
1970年生まれ。大学卒業後プラスチック成形メーカーに就職し、2010年よりフリーランスのWebデザイナーに転身、2011年からスポーツライターとしても活動を開始。主にサッカーなど地域スポーツクラブHP製作やサイト更新管理、スポーツ系のWebメディアの運営支援、記事寄稿などを行うなど、自身のスポーツ体験含め、「スポーツを語れるWebデザイナー」として活動中。


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