アメリカスポーツに学ぶ、「お金の集め方」
2015年11月08日 コラム チーム/リーグ経営 Written by 谷口 輝世子
プロスポーツチームの収入源は、大きく4つに分けられる。それは“テレビ放映権料収入”、“入場料収入”、“スポンサー収入”、“グッズ(飲食売店)収入”だ。世界中を見渡しても、あるいはどの競技であっても、ほぼ共通していると言っていいだろう。
人気のプロスポーツチームは主にこの4大収入によって経営されているが、注目度の低いプロスポーツやアマチュアスポーツ、子どものスポーツ活動においては、常に資金不足に悩まされている。
米国では、例えば高校の運動部の試合でも5ドル程度の入場料を徴収したり、保護者が売店で飲食物を販売したりするなど、活動費用を集めるためにさまざまな施策を講じている。そこで今回は、米国のスポーツチームによるユニークな施策を紹介したい。
一つ目は、NHLを目指しているアイスホッケー選手たちが所属するオンタリオ・ホッケー・リーグ(OHL)のプリモス・ホエラーズ(現フリント・ファイアーバーズ)が、近隣のアマチュアアイスホッケー協会の資金集めに協力した事例だ。
2011年、ホエラーズはプレシーズンゲームのうち1試合を、ホームリンクではなく、幼児から高校生までの選手が所属するミシガン州のファーミントンヒルズホッケー協会の本拠地リンクで開催した。このゲームのアイスリンクの利用料は、ホエラーズではなく、ファーミントンヒルズホッケー協会が負担し、その代わりに、このプレシーズンゲームによって得られる入場料収入、飲食売店収入などは、全てファーミントンヒルズホッケー協会の収益になるという条件がついていた。ファーミントンヒルズホッケー協会にとってみれば、アイスリンク利用料を負担しても、最終的には大幅な黒字になったというわけだ。
ホエラーズにとっては、本来ならば得られるはずの入場料収入や飲食売店収入を得られないというデメリットがあるが、複数の子どものチームを持つファーミントンヒルズホッケー協会にプレシーズンの試合運営に関ってもらうことで、普段はOHLに関心のない潜在的なファンを掘り起こすという効果があり、ホエラーズにとっては地域還元と同時に新しいファン層の開拓につながるというメリットがあったといえる。ホエラーズは13年、14年にも同様に、ミシガン州のリボニアホッケー協会を支援している。
もう一つは、多くの観客を集める人気プロスポーツの試合が、NPOの資金集めの場となっている事例だ。
球場やスタジアム、アリーナの売店における販売の仕事の一部を、プロスポーツチーム側がNPOに与えるのだ。NPOスタッフは最初に売店での販売法を学んでから、実際に働くことになる。売上金のうち一定の割合で、プロスポーツチームからNPOに渡すのだ。
NHLのデトロイト・レッドウィングスの本拠地であるジョー・ルイス・アリーナの売店でも、NPOスタッフが販売員として働いている姿を見掛けることがある。米国では多くのユーススポーツ団体がNPOになっており、ユーススポーツ団体の保護者がNPOの一員として販売員役を務めることがある。保護者が販売員をすることによって得られた報酬が、自分の子どもが活動しているチームの資金になる。
筆者がレッドウィングス戦に出向いた日はデトロイト郊外のユースアイスホッケーチームの保護者が販売員をしていた。名札にはチーム名も書かれている。アイスホッケーが好きでプロの試合を観戦に来ている観客は、他の売店ではなくその売店で買い物をすることで、近隣のユースアイスホッケーチームを支援しようという気持ちになりやすいようだ。
MLBのデトロイト・タイガースの本拠地コメリカ・パークでも、NPOスタッフが売店で働いている。入り口で入場許可証を受け取り、売店での労働時間をチェックする仕組みになっている。担当者は「スポーツ団体に限らず、NPOとして登録している団体であれば、売店の仕事をしてもらうことができます」と話していた。
テキサス・レンジャーズの本拠地グローブライフ・パーク・イン・アーリントンでも、NPOのスタッフが売店で働いており、売上高に応じて一定の割合をNPOに寄付する仕組みがある。NPOのガールスカウト、PTA、アマチュアスポーツチームなどがこのプログラムに参加しているそうだ。
【了】
谷口輝世子●文 text by Kiyoko Taniguchi
1994年にデイリースポーツに入社し、日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のスポーツ事情をお伝えします。著書『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店、『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)、分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)。
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