ラグビー選手に熱視線を注ぐNFL オーストラリアのスター選手がワークアウトに参加
2016年12月01日 コラム チーム/リーグ経営 Written by 川内 イオ
アメリカでは、ラグビーの存在感が薄い。今年4月に開幕したアメリカのプロラグビーリーグは、参加5チーム、開幕戦2試合の観客動員数は2300人、3400人という寂しい数字だった。しかしここ最近、2人のラグビー選手がメディアを賑わせている。
オーストラリアのナショナル・ラグビー・リーグで活躍するニュージーランド代表のソナ・タウマロロ選手とオーストラリア代表のバレンタイン・ホームズ選手が、11月26日にロサンゼルスでNFL(米プロアメフトリーグ)のワークアウトを受けたのだ。同月21日にイングランドで行われたフォーネイションズ決勝の後、共に渡米。26日は、身体測定後、体力と運動能力のテストとポジション別のテストに臨んだ。
2人は2017年末まで所属チームとの契約が残っており、チームに残留することが濃厚とみられているが、今回はNFLからの招待を受けてワークアウトに参加した。NFL側の注目度は高く、全32チーム中15チームがスカウトを送り込んだ。
NFLがラグビー選手に熱視線を注ぐのには、理由がある。アメフトは実質的にアメリカでしかプレーされていないため、約1700人(1チーム53名)の選手のうち、外国籍の選手は約1%しか存在しない。しかし、今シーズンもイギリスやメキシコで公式戦を開催するなど海外市場への進出に熱心なNFLにとって、外国人スター選手が誕生すれば、ビジネス面でのインパクトも大きくなるのだ。
昨年には、ナショナル・ラグビー・リーグで2度のMVP受賞経験もあるスター、オーストラリア代表のジャリッド・ヘイン選手が、テストマッチ11試合で11トライを挙げ、NFLのサンフランシスコ49ersと契約。開幕戦でNFLデビューを飾り、脚光を浴びた。
目立った活躍はできず、デビューから1カ月半後、49ersから解雇され、今年5月にはNFLからの引退を発表したが、似て非なるスポーツであるラグビーからアメフトに転身し、数カ月後には開幕戦に出場可能なレベルに達したヘイン選手の身体能力は、NFLのチームにラグビー選手のポテンシャルを印象付けるには十分だった。
ちなみに、NFLの採用基準の1つである40ヤード(36.6メートル)スプリントでは、ソナ・タウマロロ選手が4.9秒、バレンタイン・ホームズ選手が4.6秒だった。4.2秒台がトップクラスで、ヘイン選手はテスト時に4.53秒を出している。
ソナ・タウマロロ選手とバレンタイン・ホームズ選手がNFLに参加するかどうかは分からないが、ラグビー選手がNFLに挑戦するという流れは続きそうだ。
イングランドラグビーユニオンのトップリーグ、プレミアシップのサラセンズでプレーするオーストラリア出身のビリー・ヴニポラ選手(イングランド代表)も、サラセンズとの契約が終わる3年後、NFLでプレーしたいと語っている。
NFLと契約した日本人はまだいないが、もしかすると近い将来、五郎丸歩選手のようなラグビーのトッププレーヤーがNFLワークアウトに臨む日が来るかもしれない。
【了】
川内イオ●文 text by Io Kawauchi
1979年生まれ。大学卒業後の2002年、 新卒で広告代理店に就職するも9カ月で退職し、2003年よりフリーライターとして活動開始。2006年にバルセロナに移住し、主にスペインサッカーを取材。2010年に帰国後、デジタルサッカー誌、ビジネス誌の編集部を経て現在フリーランスの構成作家、エディター&ライター&イベントコーディネーター。 ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンターとして活動している。
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